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風が優しく頬を撫でて、目が覚めた。どれくらい気を失っていたのか分からないが、雲の隙間から太陽の光が差し込んでいた。
体を起こして辺りを見回したが人の姿はなく、ただ
草原が広がっているだけだった。
「ライカ、聞こえますか?」
ライカから返答はなかった。
みんなを待っていても仕方ないと思い、最後の目的地であるザバームに向かおうと地図を広げたが、地図は白紙だった。
「ライカ、聞こえますか?」
歩き始めて数時間経ったが、景色が変わらず返答も
相変わらずなかった。気持ちばかりが焦ってしまい体がついていかず足がもつれて転びそうになった。その時、子どものような笑い声が聞こえた。
「···誰かいるの?」
声がした方へ恐る恐る近寄ると、誰もいなかった。
「ここだよ」
「えっ!?」
耳元で声がして驚くと、また笑い声が聞こえた。
「ここだよ、ここ!」
目を下に向けると、草の上に羽が生えた小さな女の子が手を振っていた。屈んで、目線を合わせると鼻にデコピンされた。
「···ここはどこ?」
「え!?知ってて来たんじゃないの?」
女の子は驚いて羽をばたつかせた。
「目が覚めたらここにいて···」
「そんなの初めてだから私もわかんない···」
女の子は少し考えて、何かを思いついた。
「私についてきて!」
そう言うと、ある方向に飛んだ。
「どこに行くの?」
「それは···行ってからのお楽しみ!」
女の子は無邪気に笑った。
「私はリリ、あなたは?」
「僕はケイ。転生者だよ」
リリは疑っているようだった。
「あんなに間抜けなのに?」
「あれは···ただびっくりしただけだよ」
「ふーん、強がらなくてもいいのに」
リリにいじられながら進んでいくと、草原の先に
緑が眩しい森が見えた。
「さっき、こんなのなかったのに···」
「当たり前じゃん。あれは精霊の森で私の案内なしでは行けないところだもん」
「そうなんだ」
森の入り口に立つと、空気が変わった。
「私の案内はここで終わり」
「一緒に来ないの?」
リリは頷いた。
「この森の奥に精霊の女王がいるから、何が起きたのか聞いてみて」
「奥って···こんなに広いのに?」
「大丈夫。私の声が聞こえたなら、女王の声も必ず聞こえるはずだから」
そう言って、リリは僕の背中を押した。
「ほら行って!」
「またリリに会える?」
「もちろん!女王がケイを気に入ればね」
「···うん、分かった」
リリに見送られ、不安を抱えながら森の中へと足を踏み入れた。
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