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「その子はレム。土の精霊です」 リラの声が聞こえた。 「レム、宜しくね」 レムは答えるように鳴いて、暗闇に姿を消した。 残るは火、雷、風の精霊だ。水のカーテンを抜けて 空を見上げると、大鳥が飛んでいた。しばらくして高台にある大木の上で羽を休めた。 ロムを呼んで岸までつれてってもらい、高台を目指した。見た目以上に上り坂がキツく、高台に着くころには息が上がり足が張っていた。 大木には足をかけられそうなこぶが多く、上手くやれば登れそうだった。悪戦苦闘しながらも、何とか 頂上まで登りきった。 鳥は飛び立つ様子もなく僕をまっすぐ見ていた。手を伸ばして羽に触れようとした時、静電気のような衝撃が指に走ってバランスを崩してしまった。 掴んだ木の枝は体を支えられるほど強くはなく、折れてしまい頭から落ちていった。体勢を立て直そうとしたが、地面は目と鼻の先だった。 ぶつかると思い、手で頭を庇って目を瞑った。だが 気づいたら、鳥が僕の肩を掴んで空を飛んでいた。 寸前のところで助けてくれたようだ。 「その子はリム。雷の精霊です」 「リム、宜しくね」 リムは大きな翼を動かして、森の上空を一周した。 湖の上から見る景色とはまた異なり、森全体が一望できた。森の先は霧がかかっていて、何があるのか確認できなかった。 リムはゆっくりと高度を下げて、森の北の方にあるに僕を降ろした。 「ありがとう、リム」 飛び立つ前に頭を撫でてあげると、少し照れながら嬉しそうに翼を広げた。大きく口を開けた洞窟からは冷たい風が吹いていて、寒さで体が震えた。 洞窟に入ると、鍾乳石が天井から無数に垂れ下がっていて水滴が絶えず地面を濡らしていた。だんだん視界が狭くなっていき少し不安な気持ちになった。 風は洞窟の奥から吹いていて、寒さを我慢しながら進むと明るい空間に出た。行き止まりになっていて天井も地面も宝石のような石が光を反射して、プラネタリウムにいる気分だった。 見惚れていると、背後で影が動いた。次の瞬間、炎で体を纏った狼が現れた。狼がいた場所には隙間があり、そこから冷たい風が吹いていた。 他の精霊に比べると、かなり警戒心が強くなかなか近づくことができなかった。敵意はないということを表すために跪いて狼と同じ目線になった。 風の冷たさが体温を奪い、次第に体の感覚が鈍って頭がぼんやりしてきた。狼は首を傾げて、どうするべきか考えているようだった。

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