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合流−1−

意識が薄れる中、狼に手を伸ばした。狼は手の匂いを嗅ぐと、ゆっくり近づいてきた。体に纏った炎が暖かくて、体温が徐々に戻ってきた。 「ありがとう」 そう伝えると、炎が消えて狼は真っ白な毛に覆われた姿になった。毛は柔らかくふわふわで、撫でると気持ちよかった。 「その子はラム。火の精霊です」 「ラム、宜しくね」 ラムは答えるように遠吠えをした。 ラムの背中に乗って洞窟を出た。森が茜色に染まり夕日が顔を照らした。ラムが足を止めたのは、森の真ん中にある大きな石が5つ並んだ場所だった。 ラムと別れた後、木々が揺れ始めつむじ風が色とりどりの葉を巻き上げながらこちらに向かってきた。風に巻き込まれないように石の影に隠れた。 風がやむと立派なたてがみを持つ黒い馬がそこにはいた。艶のある綺麗な毛並みは気高さを体現しているようだった。 石の影から出て、黒馬と向かい合った。無駄のない締まった体はどこから見ても圧巻だった。 「力を貸してください。お願いします」 頭を深々と下げ、反応を窺った。黒馬は蹄を鳴らしながら品定めするように僕の周りを回った。 「みんなを守りたいんです!」 その言葉に黒馬の足が止まった。真っ直ぐ目を見て 一歩ずつ近づいていった。右手を差し出すと、寄り添うように体をくっつけた。 「その子はルム。風の精霊です」 「ルム、宜しくね」 ルムは嬉しそうに体を震わせた。 「これで精霊が揃いましたね」 振り向くと、リラがいた。 「みんなあなたのことが気に入ったようですね」 微笑みながらリラはそう言った。 「そうだといいんですけど···」 「自信を持ってください」 リラの言葉に合わせて、ルムが背中を押した。 「精霊の力を借りたいときは、名前を呼んであげて ください」 「分かりました」 「あなたに精霊の加護があらんことを」 そう言って、リラは姿を消した。 「行こう」 ルムの背中に跨って森の入り口を目指した。 「ケイ!こっち、こっち」 入り口でリリが手招きしていた。 「もしかして、僕のこと待っててくれたの?」 「そ、そんなんじゃないから!」 照れているのか頬がほんのり赤くなっていた。 「リラ様には会えた?」 「うん、色々とありがとう。もう戻らなくちゃ」 「この草原を抜けたら仲間に会えるよ」 「分かった」 これでお別れだと思うと寂しくなった。 「リリ、また遊びに来てもいい?」 「もちろん!待ってるから」 リリはそう言って、僕たちの姿が見えなくなるまでずっと手を振っていた。

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