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ルムは風のように草原を駆け抜けて、気づけば砂利道になっていた。振り返ると草原は消えていた。 「ライカ、聞こえますか?」 試しにライカを呼ぶと返事が返ってきた。 「ケイ、待っていたぞ」 地図も元通りになっていて、ライカたちがいる場所を確認することができた。最後の目的地、ザバーム に向かっているようだった。 「クリスは無事ですか?」 「ああ、心配いらない」 ホッと胸を撫で下ろし、早く合流できるように先を急いだ。 しばらくして、ライカとその隣を歩くクリスたちの 姿が見えた。 「おーい!」 大声で叫んで手を振った。みんなが振り向いて、驚いた顔をしたまま駆け寄ってきた。 「ケイ!無事でよかったです···」 マイルが目を潤ませて抱きついてきた。 「ごめんね、心配かけて」 「ケイがいない間クリスの相手する人いなくて大変だったんだからね」 ジュリアが笑いながら愚痴をこぼした。 「迷惑かけてごめんなさい」 「···よかった、生きてて」 クリスは両手で僕の顔を優しく包んだ。 「それはこっちの台詞です」 僕もクリスの顔に手を添えて微笑んだ。 「まさか精霊と一緒とはな」 ライカがルムに気付いてそう言った。 「後で話します」 そう言うと、ライカは指輪の形に戻った。 「街の人たちは?」 一緒だと思っていたが姿は見当たらなかった。 「瓦礫を集めてフルとカイリのお墓を建てるみたいです」 マイルがそう教えてくれた。 「ところで、その綺麗な馬は何?」 ジュリアが聞かれたので、精霊の森であったことをみんなに話した。 「精霊か···。おとぎ話だと思っていたが」 クリスはルムのたてがみを撫でた。 「マイル、お馬さんに乗りたいです!」 マイルをルムの背中に乗せると、目が輝いてた。 「景色が全然違います!」 「私も乗りたい」 ジュリアがルムに近づくと、ルムは威嚇した。 「確実に嫌われてるな」 クリスが笑うと、ジュリアは拗ねた。 「ジュリア、なんか可哀想です」 マイルがボソっと呟いた。 「可哀想じゃないわよ!」 そう言って、スタスタと先を歩いた。 「ヒュートが崩落してどのくらい経ちましたか?」 クリスに聞くと、2日しか過ぎてないようだった。 「そんなに驚くことか?」 「一週間くらい経ってると思ってたので···」 「おそらく時間の流れが違うのかもな」 リラが同じことを言っていたのを思い出した。 「綺麗なところだったんだな」 「夢みたいな場所でした」 「いつか一緒に行こう」 クリスが手を握ってそう言った。返事をしようと思ったが、遺跡で見た言葉がふと浮かんで手を握り返すことしかできなかった。

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