65 / 78

−2−

着替えを済ませて、ゴルに会いに行った。衛兵は僕たちを見ると何も言わずに案内してくれた。着いたのは、一際派手で目を引く建物だった。 中に入ると、色とりどりの布が天井から垂れ下がっていてお香のようなものが焚かれていた。 「鼻がおかしくなりそうです···」 マイルは強い香りで苦しそうだった。 「確かに、かなりキツいわね···」 ジュリアは鼻をつまんでいた。 「あまり長居はしたくないな」 クリスがそう言うと、奥から声が聞こえた。 「随分無礼な人たちね」 現れたのは、街の人たちと同じように顔の半分が布で覆われた性別不詳の人物だった。 「私がザバームのキーパー、ゴルよ」 「仲間が失礼なことを言ってすみません」 みんなの代わりに謝っておいた。 「いい男がいるから、まぁよしとするわ」 ゴルはクリスを舐め回すように見ていた。 「石はどこだ?」 「せっかちな男は嫌いよ」 ゴルはクリスに近づいた。 「急がないと追いつかれます」 そう言って2人の間に割り込んだ。 ゴルは僕を睨んで舌打ちをした。 「目の前にあるわよ」 「冗談はよせ」 クリスの言うとおり、僕たちの目の前にはゴルしかいなかった。 「まさか···」 ゴルは僕たちに背中を向けて服を脱ぎ始めた。 背中の真ん中に輝く石が埋め込まれていた 「そのまさかよ。私と石は見ての通り一心同体」 思いがけない光景に誰も言葉を発しなかった。 「驚くのも無理はないわね」 ゴルが服を着直した。 「もし石が壊れたら···」 「もちろん、私も死ぬわ」 ゴルの表情は変わらなかった。 「怖くないのか?」 クリスの問いに首を縦に振った。 「これが私の役割だから怖くなんてないわ。それにこんなにいい男の前で死ねるなら本望よ」 そう言って、ゴルは笑った。 「マイルが治します!」 「人はいずれ死ぬものなのよ」 ゴルはマイルの頭を撫でた。 「あなた達にお願いがある」 ゴルの口調が変わった。 「私と共に戦ってほしい」 「そのつもりで来た」 クリスの言葉にゴルは頷いた。 「近づいてます」 地図を見ると、すごいスピードで魔術士がこちらに 向かってきていた。 「時間を稼ぐ方法ならあるわ」 ゴルはそう言うと、建物を出て砂嵐を起こした。 「気休めかもしれないけど、その間に街の者を安全な場所に避難させる」 ゴルは衛兵を呼んで、避難の指示を出した。 「あなた達は戦いの準備を」 「分かった。宿屋に戻ろう」 建物を出ると街の人たちが避難を始めていた。 何とか魔術士が来る前に完了しそうだった。

ともだちにシェアしよう!