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地上に降りる頃には、黒い雲は消え太陽が顔を出していた。地図を確認したが魔術士は消えていた。 「ひとまず安心だな」 「そうですね」 「街の者達の様子を見てくる」 そう言って、ゴルは戻った。 「ライカ、精霊たちを治せますか?」 「おそらく我々ができることは精霊が回復するまで 待つことだけだろう」 「そうですか···」 次の戦いまで間に合うかどうか不安に思っていると 耳元で声がした。 「ケイ、来ちゃった!」 顔を右に向けると、リリが目の前にいた。 「リリ!?ここで何してるの!?」 「リラ様に頼まれて会いに来たの」 気づけば、みんなの視線がリリに注がれていた。 「精霊の森で案内してくれたリリです」 一応みんなに紹介した。 「用件はなんだ?」 クリスが聞くとリリが僕の後ろに隠れた。 「なんか怖いんだけど···」 「クリスは優しいよ」 「絶対、嘘!顔が怖いもん!」 クリスは少しムッとしていた。 「それでリラから何を頼まれたの?」 「リムとルムは今、精霊の森で休んでるって伝えてくるよう頼まれたの」 「よかった···。どのくらいかかりそう?」 「うーん···精霊によって違うからなぁ」 「そっか。教えてくれてありがとう」 「うん!じゃあ行くね」 そう言って、リリは消えた。 「俺、そんなに怖いか?」 クリスがリリに言われたことを気にしていた。 「まぁ、怖いっていうか圧が強いっていうか」 ジュリアのフォローは逆効果だった。 「マイルは慣れました!」 「慣れたって···最初は怖かったのか?」 「はい!」 マイルのストレートな言葉に笑ってしまった。 「ケイ、笑い事じゃないぞ」 「ごめんなさい」 こんな他愛もない会話をずっとしていたかったが、そうもいかなかった。 「地下から何かが近づいてくる」 ライカがそう言った瞬間、街全体が揺れ始め、地下からさっきのアリジゴクのような魔物が現れた。 避難場所は魔物の目と鼻の先だった。 「街の人たちを助けないと!」 「我に任せろ」 ライカは魔物の気を引いて建物から遠ざけた。 「今のうちに!」 街の中に入ると、ゴルが先導して街の人たちを別の場所に移動させていた。 「みんな無事ですか?」 「ええ···何とかね。何事?」 「魔物が地下から襲ってきたみたいで···。今はライカが足止めしてくれています」 「そう、それなら時間が稼げそうね」 「俺たちも何か手伝う」 クリスが提案したが、ゴルは首を横に振った。 「ここは任せて。あなた達はライカのところに」 「分かった」 クリスを先頭にライカの元へと急いだ。

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