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「ゴル!」 駆け寄ったときには、もう遅かった。 砂の壁は魔力の源を失い、脆く崩れ去った。 「命は儚いな」 手が穴の中心に密集し、蕾のような形になった。 花びらが開き始めると、体が漆黒の闇に染まった 魔術士が現れた。 「宴の始まりだ」 両手を空に伸ばすと、青、赤、黄、茶色の石が周りに浮かんだ。 「···あなたの目的は何ですか?」 「目的?そんなつまらないことを聞いてどうする」 魔術士は僕を鼻で笑った。 「絶望に打ちひしがれるがいい」 石が放っていたまばゆい光が魔術士に取り込まれ、 魔術士の翼がさらに大きくなった。 「ハハハ!力がみなぎってくる!」 「石が1つ欠けているにしろ、凄まじい魔力だ」 ライカの言うとおり、あっという間に空がまた雲に覆われ、体が持っていかれそうな風が吹いた。 「ここから今すぐ離れるぞ!」 ライカの背に乗って、風に逆らうように飛んだ。 「無駄な悪あがきはよせ」 魔術士の口元が緩み、両手を広げた。 空から黒い柱が伸びて、ザバームの街を一瞬で塵に してしまった。 「地獄みたいだな···」 隣りにいるクリスが呟いた。あまりの光景にマイルとジュリアは言葉を失くして抱き合っていた。柱は次々と地面に伸びて、あらゆるものを飲み込んだ。 「どうすれば···」 精霊の力を借りても、魔術士に歯が立たないことは一目瞭然だった。ライカは柱の間を縫うように飛んだが、だんだんと逃げ道がなくなった。 「ケイ」 クリスが僕の名前を呼んで手を握った。 「···出会えてよかった」 その言葉に思わず泣きそうになった。 「僕も···クリスに会えてよかったです」 クリスの手を強く握り返した。 「諦めるのはまだ早い」 ライカはそう言うと、急降下を始めた。 「ライカ、どうしたんですか!?」 「話は後だ!」 ライカは金色の枠で縁取られた美しい鏡に向かって突進した。このままだとぶつかる、と思い顔を伏せたが何の衝撃もなかった。 「ここって···」 ジュリアの声で顔をゆっくり上げると、そこは精霊の森だった。 「間に合ってよかったぁ···」 リリが扉を開けてくれたようだ。 「リリ、どうして···?」 「リラ様からケイ達を連れてくるよう頼まれたの」 精霊の森は闇の力が及ばないらしく、以前のままの 美しい景色が広がっていた。 「私たち、死んじゃったの?」 そう言うジュリアの頬をマイルがつねった。 「痛いわね!何すんのよ···」 「これは夢じゃないです!」 「そう、残念ながら現実です」 振り向くとリラがいた。 「まだ間に合います」 リラはそうはっきりと言った。

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