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吊り下がったシャンデリアに明かりが灯り始めた。
「自分自身に打ち勝つこと、それが試練です」
光の精霊の声が聞こえた。
「何が始まるの···?」
ジュリアが短剣を握った。
「とにかく油断するな」
クリスも大剣を抜いた。
「影が···影が動いてます!」
マイルの言葉通り、自分の影が動いていた。
次第に平面の影が立体となり向かい合った。
「···自分の影を倒せってこと?」
「恐らくな···」
クリスが影に斬りかかると、全く同じタイミングで影が動き、剣同士がぶつかった。
「チェーンウィップ!」
ジュリアが鎖を蛇のようにしならせて攻撃したが、
クリスと同じように短剣がぶつかった。
「同じ動きに同じ技···これじゃ埒が明かない···」
「攻撃の手を止めるな!」
呪文を何度唱えても結果は同じだった。
「クソッ···だめか」
「もう動けない···」
クリスとジュリアは動き続けたせいか息が上がり、
立っているのがやっとだった。
「何か他の方法を考えないと···」
さっきリラに言われた言葉を思い出した。
光あるところに闇が生まれる
自分の影が闇だとしたら、影を生み出すシャンデリアは光になるのではと思いつき、シャンデリアめがけて呪文を唱えた。明かりが消えると、影も姿を消した。
唯一の明かりはステンドグラスから差し込む光のみとなり、辛うじてお互いの場所を確認できるほどの明るさしかなかった。
「上手く行ったみたいですね」
「これで終わりだといいが」
「だといいわね···」
クリスとジュリアは剣をしまった。
「きゃっ!」
マイルの悲鳴が聞こえて、急いで探したが見当たらなかった。シャンデリアの明かりが再び灯り、声がした方を見るとマイルが影に飲み込まれていた。
「マイル!」
助けに行こうとしたが、4人の影が1つに溶け合って
マイルの姿は完全に見えなくなってしまった。
影が歪にうごめき、ザバームで見たような無数の手に変化して僕たちめがけて伸びた。疲れてボロボロの体を何とか動かして応戦したが、3人ともあっという間に捕まってしまった。
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