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Ⅶ
妹との再会はあっと今に引き裂かれ、自分の名を泣き叫ぶアネーシャを背にシエラは南の塔とへと連れ戻された。
シエラの目尻は怒りと悲しみで赤く腫れていた。
「どういうことだ! 何でこの城の中に6年前に連れて行かれた妹がいる! あの時村から妹を連れて行ったのはお前たちだったのか!」
今にも目の前のヴァシレフスに食ってかかりそうな手負いの獣をカリトンは必死に後ろから押さえつける。
それ程今のシエラは華奢な体とは裏腹に、気を許せば主人の喉をその牙で掻っ切ってしまいそうな力強さと勢いを孕んでいた。
「口を慎みなさいっ、シエラ!」
「よせ、カリトン。慎むなんて言葉、こいつの辞書には載ってないだろう」
「いいから答えろ! ヴァシレフス!!」
熱くて熱くて、頭から火が出そうだった。
それほどにシエラは悔しくて悔しくて──
大切な妹がこの国に奪われていたかと思うと腸が煮え返る思いだった。
──少しでも錯覚した自分が愚かだった。
この国の何もかもシエラはまだ何一つ知らなかった。
誰が国王なのかですら、この国の政治や決まり事、この国の民のこと、目の前にいる王子のこと、何ひとつ知らなかったのに……。
──まやかしの体温にほだされた、運命という甘い誘惑 に縋りかけた。
頭の中で悲しみと悔しみが交差すると同時にバタバタと涙が大きな瞳から零れ落ちる。シエラはもうそれをどうすることもできなかった。
「こんな……、こんなこ、と……」
一気に力の抜けたシエラは床に崩れ落ち、嗚咽と共に肩を揺らした。
悲嘆に暮れるシエラをよそにヴァシレフスは床にへたり込んだその体を無理矢理起こした。掴まれた腕の力が強くてその痛みに顔を歪める。
「放せっ!」
「──黙れ」
叫ぶ唇はもうヴァシレフスに塞がれた。大きな体の中でシエラは全身を使って抵抗するが、ヴァシレフスの体はびくともしなかった。悔しくて睨みつけた先にあった冷たい瞳にシエラは一瞬動きを止めた。
「俺は言ったはずだ。お前が泣こうが喚こうが最後まで抱くと──」
「……ひとでなし、このクズ野郎……っ」
「そんなに妹に会いたいのなら今ここへ呼ぶか? お前が今から俺に何をされるのか、どうなるのか、妹に全部見せてやってもいいぞ」
カリトンが扉の前で気まずそうに主人の命令を待つのが見えた。
それすらシエラには屈辱的で敵わないながらも両手に力を込めながら奥歯を噛みしめる。
ベッドに押さえつけられシエラは強く眼を瞑った。
何も見たくない──
何も感じたくない──
ヴァシレフスの大きな手がシエラのキトンをあっという間に剥いでベッドの足元へと放り投げた。大きな抵抗のないシエラを気遣うわけでもなくその細い腰の上に跨り、顔の横で両手を押さえつける。
シエラは強く眼を瞑ったまま、小刻みに震えるだけで何の音も発さない。
こんなものが運命なのか──
こんなに悍ましくて、穢らわしい。
「──運命なんてそんなものだろう」
いつのまにか自分は声にしていたのだろうか、シエラは薄く眼を開きそばにあるヴァシレフスの顔を見た。
「シエラ……」
──どうして……。
名前を呼ばれるだけで涙が出るのか──
どうして──
──この男の口付けを甘いと思ってしまうのだろう──。
シエラはいつのまにか解かれていた手をゆっくりと自らその広い肩へと回した。
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腹が立つのは初めての時と違うから──
シエラはやたらと優しく自分の体を弄ぶ男に嫌気がさしながらも大した抵抗もなく繰り返される刺激を素直に受け入れた。
「ん……んっ」
喉から勝手に声が出て、恥ずかしのに気持ちよさが勝ってしまう。
鳴くたびにヴァシレフスは嬉しそうにシエラの体のあちらこちらに口付ける。
シエラの硬くなった中心を男が簡単に口に咥えて嬲るものだからシエラは怖くなって反射的に腰が逃げた。
「そんな事っ……なんでっ、やっ……汚いからやめろっ……」
「でも、気持ち良いだろう?」と、それを咥えたまま上目遣いで笑う王子様をシエラは理解出来なかった。
遊ぶように緩く噛んだり吸い上げたり、大きな舌が何度もそこを刺激してやめないせいで、シエラの限界はもう近かった。
「めっ、だめだ……っ、やめ……っ」
「我慢しなくて良い──」
「だっ……、高いっんだろっ、それっ!」
「……は?」
肩で大きく息をしながらも必死にシエラは涙目で言葉を繋いだ。
「服っ、服だよっ! 汚したくなっい、放せっ……頼むから……っ」
そこなのか? とヴァシレフスは渋い顔をしたがシエラにはその表情を確認することは出来なかった。とにかく大変なことにならないようにと自分のものを震える手で握りしめている。すでにつま先が痙攣していた。
「……嗚呼、面倒な奴だ」
本当に面倒そうな低い声で漏らすとヴァシレフスはさっさと自分を包む高価なトガとその下に巻かれた真っ白なトゥニカを剝いで足元へさっさと投げた。
一瞬自分の上から離れたヴァシレフスに安心したのかシエラは体を横に向けて今更隠すように膝を曲げた。
少し腹が立ったらしく、ヴァシレフスは不満そうに細い足首を掴んで引っ張り、シエラの手ごと隠された場所を強く握った。
シエラから変な声が上がったが、気にすることなくそのまま擦り上げる。
「バカ……っ、わっ、あっ……ああっ」
「馬鹿だと? お前は誰にものを言ってるんだ?」
ヴァシレフスの言葉などもうシエラには届いていない。眼を瞑りながらかぶりを何度も振って更に激しくなった刺激に耐え続けている。
「ヴァシ……ッ、ああっ、あっ、手放……っ」
ビクビクとシエラは腰を痙攣させながら我慢していたものをすべて吐き出した。自分の手が濡れたのを感じながらシエラは唇を噛んで余韻に浸る。濡れた唇をヴァシレフスが舐めとるとシエラは無意識に口を開いてその舌を求めた。
中を何度も舌で犯され、シエラはまた自分自身が熱くなるのを感じた。
もっとして欲しいのに舌はシエラの唇を離れてどんどん下へと這っていく。
胸の尖った場所に歯を立てられシエラはまた小さく鳴いた。何度も嬲られてはシーツに顔を埋めて止:(や)まない声を抑えた。
つまらなく感じたのか、ヴァシレフスはシエラの両膝両を掴んで無理矢理大胆に開く。
あまりの出来事にヴァシレフスを見るがすでにその頭は自分の股間にあって思わず喉から変な声が出た。
尻を上げられ恥ずかし場所がヴァシレフスに丸見えでシエラは必死に大きな肩を押しのけようとする。
生温かい生き物がその周りを這いまわり、知らない刺激が何度もシエラの中を駆け巡る。
ぐちゅりと音がして、息を呑んだ。
「あっ……あっ」
ヴァシレフスの分厚い舌がシエラの中を這っていく。怖くなってその頭を押しのけようと触れたら邪魔されたくないのか、入れ替わるようにして指が襲ってきた。
「ひゃっ」
シエラは驚いたものの、初めてされたあの時のような恐ろしい痛みはなくて、自分の中で好き勝手動くヴァシレフスの指にもう声が止まらなかった。
ヴァシレフスは楽しむようにシエラの中を犯し続ける。ある場所を押すとシエラの吐息はますます甘さを増して、自分自身が熱くなるを感じた。
初めての時はあんなに嫌がっていたくせに今は増やした指を離したくないのか、ぎゅうぎゅうと締め付けてくる。深い場所を突くと細い腰を仰け反らして鳴いた。
「ああ、クソ……」
ヴァシレフスが苦しそうに呻いた瞬間、それはいきなりやってきた。
「あっ!」
シエラは一瞬何が起こったかわからなくて眼を見開いた。腹の中に感じたことのない圧迫を感じておそるおそる目線をずらした。
「ウソ……」
ヴァシレフスが自分の中にいた──。
自分でも見たことない場所にヴァシレフスが繋がっていて、ダイレクトにそれを見てしまったものだからシエラは怖くなって無意識に締め付けてしまい今度はヴァシレフスが変な声を上げた。
それがかえってシエラには気が抜けたのか、ボカンとした顔のまま、目の前で辛そうにしている王子様を眺めた。
「シエラ!」
「ふっ、ははっ」
気が緩んだシエラは初めて目にする情けない顔をした王子様があまりにもおかしくて思わず噴き出してしまった。笑うと一緒に繋がった場所が震えてシエラからも再び変な声が出た。
「ん……っ、あ……変なの、これ……」
その吐息まじりの声に焦らされたヴァシレフスはもう我慢できないらしく一度大きく奥までシエラを貫くと今度は下になってシエラを自身の上に座らせ、細い腰を離れないように強く抱いた。
「あっ! やっ、やだ、あっ! 奥っ」
下から何度も激しく突かれ、シエラはもう笑うどころではなくなってしまった。揺れるたびに大きく鳴いて勝手に溢れる涙をヴァシレフスの胸にパラパラと落とす。
「おかしくなっ、そ……っ、あっ、だめ……」
座ってられなくなったシエラは体を折り曲げてくたりとヴァシレフスの胸に重なった。そのせいでヴァシレフスの腹に硬くなった自分自身が当たってしまい、与えられる刺激の多さに気が触れた。
「ヴァシレフスッ……、もっ、だめ、無理……っ、助けて……っ」
「もう音を上げるのか? さっきまでの勢いはどうした?」
「うるさいっ……馬鹿……ッ」
「学習しない奴だな」
シエラの最後の抵抗はかわいいものだった。
ぐにゃぐにゃになった力のない拳をヴァシレフスの胸にぶつけただけで、その後はされるがまま気を失うまでヴァシレフスに抱かれた──。
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