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第26話クスナット教国攻略戦顛末
俺とコウとアークとレイブンは、クスナット教国の王都上空にいた。
「すでに、お前たちが逃亡したことは、知られている筈だ」
クリスは、言った。
「連中は、必死で防御壁をはってることだろう」
「やはり、防御壁をはってるな」
アークが言った。
「ユウ、コウ、防御壁を破壊して」
「「うん」」
俺とコウは、手を繋いで魔方陣を展開した。
天空から雷が走り、王城の上空の防御壁を打ち、壁は、霧散した。
「次に、転移ゲートで騎士団と魔導師団を街へと転移させる」
クリスは、続けた。
「そして、王城上空より、レイブンは、全魔族へとメッセージを発信する」
俺とコウは、王都中に何ヵ所も転移ゲートを開いて兵士たちを転移していく。それと同時に、レイブンが念話を魔族へと送り始める。
『クスナット教国内の虐げられた魔族たちよ、きいてくれ。俺は、レイブン。クスナット教国主教であり国王であるバーナード・シュミルノフの子であり、獅子族の長、レイブン・シュミルノフだ。今より、俺は、魔族の隷属を解き、この国を魔族と人間が共に等しく生きられる国に変革するために挙兵する。どうか、みな、憎しみに囚われ、人を害することなく、王城を目指して集結して欲しい』
「次に、王城を占拠する。アークとユウとコウは、王城に入り、魔導師たちを倒して、魔族の兵士たちを解放し、王を捕らえろ」
俺とコウとアークは、王城へと入った。
魔導師たちが攻撃をしてきたが、何てことはない。
俺とコウの敵じゃなかった。
俺たちは、何千という光弾を展開し、わざとはずして彼らの方へと打ち込んだ。
「降伏するものは、殺しはしない。だが、刃向かう者は、殺す!」
アークが叫ぶと、魔導師たちは、攻撃を止め、俺たちに降った。
俺とコウとアークは、玉座の間を目指した。
途中、騎士たちと出くわしたが、身体強化の術を使ったアークが俺たちを守ってくれた。
アークって、魔導師なのに体術にも秀でているんだな、とか感心してたら、コウが、そっと耳打ちした。
「ユウの御主人様って、強いんだね」
「そうかなぁ」
そう答えながらも、俺は、悪い気はしなかった。
玉座の間についた俺たちを魔族の兵士たちに囲まれた王が迎えた。
「私に反乱を起こすなどとは、レイブンめ、身の程知らずが!」
王は、回りを囲んでいる魔族の兵士たちに命じた。
「この狼藉ものたちを殺せ!」
「待て!」
アークが魔族の兵士たちに呼び掛けた。
「もう、そいつに従う必要はない。我々が、あんたたちの隷属を解く!」
「本当か?」
狼の獣人が剣を下ろした。アークが頷き、すぐに、彼らの隷属の魔法を解いていった。
魔石の嵌め込まれた首輪が外れると、魔族の戦士たちは、歓喜の声をあげた。
「これで、自由だ!」
「もう、我々は、奴隷ではない!」
「よくも、今まで、我らを虐げてくれたな!」
一斉に、戦士たちが玉座へと振り返った。
しかし、すでに、玉座は、空だった。
「王は、我々が追う。あんたたちは、レイブンのもとで城に集まってくる魔族たちのことを頼む!」
「わかった!」
戦士たちは、頷くと、城門へと向かった。
俺たちは、王の後を追った。
王は、城の宝物庫にいた。
奴は、1人の獣人の女を連れていた。
獅子の耳に尾を持つその魔族の女を見たコウが叫んだ。
「レイブンのお母さんだ!」
「この女の命が惜しければ、そこを退け!」
王は、俺たちに向かって怒鳴った。レイブンの母親である人は、俺たちに言った。
「私にかまわず、この男を!」
「黙れ!このメス犬が!」
王は、その人を殴り付けた。アークが神速で王に詰め寄るとその手を押さえた。
王は、驚愕の表情を浮かべた。
「何をする!この、無礼者が!」
「どっちが、無礼者、だ!」
アークは、目にも止まらぬ速さで王に拳を繰り出した。王は、後ろに吹き飛び、動かなくなった。
アークは、レイブンの母親に声をかける。
「大丈夫か?」
「はい」
アークは、レイブンの母親の解呪をし、首輪を外した。
レイブンの母は、静かに、涙を流していた。
俺たちは、王を捕らえると玉座の間へと戻った。
「レイブン!」
玉座の間に立ち尽くしているレイブンに、コウが駆け寄った。
「コウ!」
二人が抱き合うのを、俺とアークは、見つめていた。
「レイブン」
「母さん・・」
レイブンが母親に駆け寄り、抱き締めた。
俺たちは、他の城内にいる魔族の人たちの隷属の魔法を解呪していった。
人間たちは、慌てて城から逃げようとするものたちが多かった。だが、アークに救われた1人の獣人が言った。
「逃げることはない。我々は、あなた方を傷つける気はない」
それでも、人間たちは、多くが先を争って逃げ出していった。
逃げることなく残った人々の中には、数名の大臣たちがいた。
彼らは、レイブンに同情的だった人々だった。
「あなたが反乱を起こすとは驚きです」
若い大臣の1人がレイブンに言った。
「だが、反乱とは、起こしてからが大変なのです。我々は、あなたの力になりたい。共に、この国を建て直していきましょう」
レイブンがアークの方をちらっと窺った。アークは、頷いた。
「この国をこれから建て直していくのは、あなたたちの仕事だ。もちろん、我がアストラル王国も支援は惜しまない。が、それでも、この反乱が成功と言えるのかどうかは、あなたたち次第だ」
こうして、俺たちのクスナット教国攻略戦は、終了した。
まだまだ地方に潜伏している残党とかもいるが、レイブンのもとには、多くの魔族の戦士たちが残ってくれているので問題はないだろう、というのがクリスの考えだった。
反乱の時に、一斉に逃げ出した人間たちも魔族の人々が人間に危害を加えないとわかると徐々に王都に戻ってきた。
だが。
魔族の中にも、クスナット教国を去って、故郷へ帰ることを望む人々も多くいた。
レイブンの母親も、その1人だった。
人間の襲撃によって壊滅した一族の再興のために彼らは、故郷へと帰っていった。
街中では、時々、人間と魔族の衝突が起き、兵士たちが収拾に向かうことがあった。
「人間は、俺の家族を殺した。そいつらと仲良くなんてできるわけがない」
そう言う魔族も多かった。
「所詮、レイブン王は、人と魔族の合の子じゃないか。魔族の気持ちは、わからない」
だが、レイブンは、決して、諦めることはなかった。
彼らは、両者がわかりあえることを信じて国を復興していった。
そんなレイブンを『Rー15』コウは、常に付き従い、守り続けていた。
もと、クスナット教国の主教であり国王であったバーナード・シュミルノフは処刑になるのが相応のところを国外追放に減刑された。
「魔族は、人を許すことが出来るのだという証、だ」
と、レイブンは、言った。
クスナット教国は、レイブンたちの手で、クスナット共和国へと変わった。
この世界には、珍しい、国民により代表が選ばれる国へと変わった。
クスナット共和国の初代大統領は、レイブン・シュミルノフだった。
もちろん、ファーストレディ?は、コウだった。
コウは、正式なレイブンの妻となった。
「獅子は、何者であれ、孕ませることができる」
おいう言葉通りに、コウは、数年後に、レイブンの子を妊娠し、出産した。
俺のかわいい甥っ子たちだ。
「ユウも子供が欲しくないか?」
アークに聞かれて、俺は、頭を振った。
「俺は、そんな幸せを望むことはできない」
だって、俺は、あまりにも罪を犯しすぎている。
そんな幸せを望んではいけないのだ。
アークは、レイブンの母の村を訪ねて『Rー15』について学んでいた。
『Rー15』は、というか、『R』シリーズは、人に変化したときの姿を変えることができる。
だから、やろうと思えば、性別を変えて子を孕むことも可能なのだという。
実際に、『Rー12』ティルは、ディアン王子の妃となって子をなしている。
だから、アークは、俺にきいたのだろう。
「アークは、どうなんだよ?」
俺は、きいた。
アークは、こう見えても、伯爵家の当主だった。
跡継ぎが欲しくないの?
俺の問いにアークは、答えた。
「もちろん、跡継ぎは、欲しいが、お前との子でなければいらない」
マジで?
「そんなに頑なにならなくてもいいんじゃないか?」
『Rー7』ロイドが俺に言った。
「お前が過去に行ったことは、お前の望むところではなかった。そこまで、お前が思い悩むことではないのでは?」
うん。
でも、俺は、男だし。
いくら、愛するアークの子供でも、そんな簡単には、思いきれないよ。
そんな風に俺が思い悩んでいた頃、その事件は、起こった。
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