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第4話 企み

「本当になんでこんなことになったんだ……」 コインランドリーに行った時の事を思い出して、おれは何度目かのため息を吐く。 なんとか体を起こして女装に使った服を畳み、ウイッグの手入れをしたら、それらを鍵付きのスーツケースに入れて片づける。 これ以上、他の人間にばれるのは避けたい。慎重にしなければ。 鏡に映るおれは服を着替えるとどこにでもいる二十代の男だ。 ばれたあの日から冬夜は定期的に連絡をしてきて、おれの休日が分かると部屋に来て女装させて、おれをおかずにするように楽しんで帰っていく。 「シャワー浴びてこよう……」 おれは気分を変えるためにお風呂にむかった。 おれの住んでいるシェアハウスは大きめで住んでいる人も多い。建物の中心に大きなキッチンと食堂のようなダイニングがある。 よく仲のいい人達で鍋パーティーなどをしている。おれは忙しくて参加したことはないが人も多くて賑やかだ。 そしてランドリーとお風呂もある。 大きな浴場と、個別にシャワーを浴びれる個室もあって、時間が遅くなるようなおれでも気兼ねなく入れるのでありがたい。 「あ、あいつまた……」 シャワーを浴びていたら、背中のあまり見えないところにキスマークが付いているのをみつけた。冬夜だ、以前もやられたからそうだろう。なんでわざわざこんな事をするのかわからない。 止めろと言ったが聞いてくれそうになかった。 「服を着たら見えないところだけど、なんで……はぁ……」 シャワーから出て服を着て、自分の部屋にもどる。 「本当にどうにかしないと……」 シャワーを浴びて少し落ち着いたので、改めてこの状況をどうするべきか考えてみる。 こんな状況になった当初は、冬夜はモテるし人気もあるからおれの事なんてすぐ飽きるんじゃないかと、わずかに期待していた。 しかし、今のところ飽きる気配がない。 このまま飽きるのを待っているのは辛い、なんとか対策を考えないと。 「そういえば、冬夜はおれの反応が面白いって言ってたな……」 以前の会話の中でそんな事を言っていたのを思い出した。 「からかって言った冗談かもしれないけど、なんの反応もしなかったら流石に冬夜も飽きてくるんじゃ……」 そう思うと何だかいい考えのような気がする。 そう言えば、初日に女装がばれて色々された時も冬夜はおれの反応を面白がっていた。マグロみたいにじっとして反応しなかったら、飽きてくれる可能性はある。 そう思うとさらにいい考えのように思えてきた。 「よし、この作戦でなんとか……」 ——そんな次の休日、冬夜からまた連絡が来た。 「え?……これを着るの?」 冬夜はおれの部屋に来るなり、何か大きめの紙袋を手渡してきた。見てみると、どうやら服のようだ。 おれは袋から取り出して固まる。 その服はいかにもなメイド服だったのだ。 「そう、着て欲しくて買ってきたんだ。下着もあるから着てね」 冬夜はニコニコしながら言った。 「っ……な………………わ、わかったよ……」 一瞬嫌だと言いそうになったが、冬夜はこういう反応を面白がっているんだと寸前に思い出して従うことにした。 嫌々ながらも着替える。いつも通り女装してまっていたので、またさらに違う女物の服を着る形になった。 冬夜が渡してきた服はスカートが極端に短く、胸元がざっくり開いているタイプで実用性は皆無だ。いかにも特殊なプレイ用に作られたようなメイド服だった。 あんまり反応したら面白がらせると分かっていても、恥ずかしくてスカートを下げもじもじしてしまう。 「やっぱり、思った通り可愛いメイドさんになったな」 着替えると冬夜は全身を舐めるように見ながら嬉しそうに言った。 「……こういうのこそ女の子に頼めよ……おれがしても似合わないし変だろ?」 おれが今まで着ていた女装服は大体は、肌を極力隠す物ばかりだった。いくら小柄で華奢でも、よく見るとゴツゴツしていて角ばっているので肌が露出しているものは一発で男と分かる。貧弱な体なのでスタイルもよくないから、誤魔化すしかないのだ。 冬夜から渡されたメイド服は足も腕も見えているし、何よりも一番わかりやすい胸が晒されている。 一応鏡で自分を見たが明らかに男が女物の服を着ているのが分かる恰好でいつもより恥ずかしい。 これなら裸の方がましなくらいだ。 冬夜は驚いたように言った。 「女の子に頼むなんて、俺が変態みたいじゃないか」 「おれにこんな格好させてる時点で十分変態だろ!」 心外だみたいな顔をしていうので思わず突っ込んでしまった。本当に、冬夜が何を考えているのか分からない。 「こっち来てよ。せっかくメイドさんになって貰ったし、何してもらおうかな」 冬夜は嬉しそうにおれを引き寄せそう言った。 「っちょ……まさか、なりきって変な事させようとしてるんじゃないだろうな」 この格好をするだけでも恥ずかしいのに、何かのプレイを要求されても無理だ。 「変な事って?ご主人様って言わせるとか?いい考えだね」 冬夜はニヤニヤしながら言う。 「……っだから、嫌だって……」 「じゃあ、ご主人様って言ってもらおうか。それで、俺のここにご奉仕してもらおうかな」 冬夜はそう言ってズボンをくつろげた。 「っ!な、なんで………………わ、分かったよ……」 絶対にしたくなかったが、反応しない作戦を思い出してぐっと堪える。ここで我慢すれば解放されるかもしれないのだ。今後の事を考えると従った方がいい。 どちらにしても脅されているのだ、最終的にする羽目になるのは目に見えてる。長引かせるより早く終わらせた方がいい。 おれは息を整えて、ベッドに腰かけている冬夜の前に跪いた。 冬夜のそれは、勃っていない状態だがそこそこ大きい。まじまじと見つめると、グロテスクな形状に思わず躊躇する。 こんな事になるまで男同士で触ったことなんてなかったし、フェラなんて当然一度もした事なんてない。こういったことはあまり興味もなくて昔、付き合っていた彼女にもしてくれなんてことも言ったことが無かった。 でも、いつまでも迷っていても仕方がない。おれは思い切って、それを口に含む。 「んぐ……」 口の中に変な味が広がる。初めてでどうすればいいかわからず舌を這わしたり、出したり入れたりしてみる。 「伊織ちゃんフェラも下手なんだね」 冬夜はクスクス笑いながら言った。 「う、うる……さ……っぐ」 「くすぐったいから喋らないで。ほら、もっと濡らして……」 「んぐ……んん」 「そ舌を全体的に使って。鼻で息するんだよ……そう、いいよ、上手くなってきた……」 冬夜はそう言いながらおれの頭を撫でる。おれは取り敢えず早く終わらせたくて言われた通りにする。それでも冬夜のものは大きいし、しかも段々と大きくなってくるせいでさらに苦しくなってきた。 冬夜も気持ちがいいのか、顔が紅潮している。 「ほら、もっと奥まで咥えて。そう、最高……伊織ちゃん口が小さいから、奥の方が締め付けてきてすげー気持ちいい」 冬夜はそう言いながらおれの頭を掴んで動かす。おれはされるがまま堪える。 「ぐ、うぐ……っ!」 苦しくてえずく、涙が滲んだ。思わず上目遣いで見ると冬夜は顔をしかめた。 「ヤバい……っもうイキそう」 「え?うぶ……っ」 イキそうと言った途端、口から物を引き抜かれた。 あれ?と思ったら顔に生暖かいものがかかった。 「う……くっ、……何するんだよ。服までかかったじゃん」 出たものはちらばって服までかかった。 「いいんだよ。っていうか、これがしたくて服買ってきたんだし」 「はぁ?このために?もったいない……」 思わず呆れる。なんでいきなり服を買ってきたのかと思ったが、まさかそんな理由だったとは。 「めちゃくちゃエロい……。こっち来て」 「うわっ……」 そう言って冬夜はおれを立たせて膝の上に座らせる。そうして、いつものように抱きこむと大きく空いた襟ぐりを更に引き下げる。 「っ……変態……」 「メイドさんに言われると興奮するね」 冬夜はおれの罵倒も効かず、さらに指で精液を掬うと、乳首に塗りつけいじりだした。 そのまま顔を無理矢理後ろに向かせ、キスをする。精液は口にも付いていたから、冬夜は顔をしかめる。 「うえ……不味……」 「自分のだろ……っ」 不味いと言ったくせに冬夜はまたしつこく口を塞ぐ。その間も胸を探る手は止まらない。 その時、冬夜が何気なく言った。 「そう言えば、今日は随分素直だね……」 そう言われてぎくりとする。 「べ、別に……」 「もしかして、この間俺が反応を面白がってたから、反応しないようにしてるとか?」 「ち、違うよ。こ、これくらいのこと慣れてるし、こんな事た、たいしたことないから……」 おれはバレたらまずいと、慌ててそう言う。その途端冬夜は表情を消して目を細める。 「へえ……慣れてるねぇ……」 「っえ?何するんだ?」 冬夜はおれを膝から降ろすと、姿見のまえに跪かせた。鏡にはメイド姿のおれが映っている。しかも胸がはだけてところどころ白いもので汚れている。どう見ても卑猥だ。 「そういえば、この鏡って結構大きいよね。もしかして女装するために買ったの?」 「そ、それは……」 図星を突かれて口ごもる。そうなのだ女装に嵌る前は鏡なんて備え付けのものくらいしかなかったが、女装を初めてから全体を見たくなって買ってしまった。 改めて言われると恥ずかしい。 冬夜おれを鏡に手を突かせる。そうして、背後から抱きしめるように手を回す。 「ほら、これで伊織ちゃんのエロい姿見ながら出来るよ」 「っな……」 「男なのに、こんな恰好して後ろから胸いじられて最高に気持ちいいでしょ?」 そう言いながら、また指で乳首をいじる。 「そ、そんなこと……」 何をされているのか一目瞭然の状況に、顔が真っ赤になる。 「あれ?慣れてるんじゃないの?顔が真っ赤だよ」 「う、うるさ……」 耳元で囁かれ言い返したが説得力のない擦れた声しか出なかった。 「マジで可愛い……丁度いいし、今日はすまたをしてもらおうかな。足閉じて」 「え?うわ……」 冬夜はおれの下着を降ろすと、閉じた足の間に自分のものを挟む。 「伊織ちゃんの肌ってすべすべしてて触り心地もいいんだよね」 そう言って冬夜は太ももを下から上に撫でながら、腰を動かし始めた。 「っあ……っ……」 「しかも、敏感で感じやすし」 背中にざらりと舌が這う感触がして舐められているのを感じる。ゾクゾクしたものが体を走り思わず体が跳ねる。 「伊織ちゃんはここが好きだよね」 「ち、ちが……」 「あ、また嘘ついて……これはお仕置きだね」 「え?な、なにを……うぐ」 冬夜はいきなり指を俺の口に入れてくる。 「よく濡らして」 「な、なにを……うぐ」 「そう言えば口の中にも性感帯があるんだって。伊織ちゃんのここも開発したいな……よしこんなものかな」 そう言って指を引き抜く。そしてその指をそのまま後孔に触れ、そのまま指を入れた。 「え?ひゃ!な、なにを」 今まで色々されたがそこは触れられる事はなかった。疑似的に女の子扱いして性欲のはけ口にする程度だと思っていたので、そんな事までされるとは思わなかった。 「ここも気持ちいいところがあるの知ってる?」 「し、知らない!お願い、それ止めて」 「ほら、静かにしないと他の人に聞かれるよ。大丈夫すぐ気持よくなるから」 「っ……でも……っひゃ!」 指が奥の方にある場所に触れると、思わず声が出てしまった。 「凄い、本当に反応がいいね。ここが伊織ちゃんのいい場所?」 「っやぁ……っ、そこ、触らないで……」 いままで感じたことがない感覚に体に力が入らなくなってくる。鏡に手を突いていたがズルズルと下に下がって顔はほとんど鏡にくっつきそうになっている。 「やっぱり感じやすいよね。ほら、こんなにエロい顔してるじゃん……」 そう言って冬夜はおれの体を引き寄せ、体を起こさせて顎を掴んで正面を見させた。 鏡には顔を真っ赤にさせ、眉毛をㇵの字にして目を潤ませているおれの姿が映っている。 どう見ても、何も感じてないようには見えない。しかもこの体勢だと後ろから犯されているみたいで凄く卑猥だ。 「っふ……あ、ああ……」 「よっぽど気持ちいいんだね。伊織ちゃんのここ、触ってないのに勃ってるよ」 「っあ!ダメ……そっちも触ったら……」 「凄い、先走りでぐちょぐちょに濡れてる。おもらししちゃったみたいだね」 確かにそこは濡れていて、床にぽとぽとこぼれている。冬夜はそれを掴むとゆっくり扱きだした。 「あ……っあ……っ」 親指の腹で先の方を刺激され、すぐにイキそうになる。 「気持ちよさそうだね。俺も一緒にさせて」 そう言って冬夜はまた腰を動かし始める。手はおれの陰茎を扱いていて同時に来る刺激にさらに追い込まれてしまう。 「あ……っやぁあ……っ」 「伊織ちゃん、可愛い。もっと気持ちよくなって……」 そう言って冬夜は追い込むように激しく扱く。 「っ……っ!あ……ああ……」 おれは我慢できずあっという間に熱を吐き出す。出たものが鏡に飛び散る。 「俺もイキそう……」 冬夜はそう言って激しく腰を動かす。肌と肌がぶつかる音が響く。 そして強い力で抱きしめると、顔をしかめ同じように熱を吐き出した。 やっと終わったと床にぐったり横になる。フローリングが冷たくて気持ちいい。 「はあ……はあ……」 しかし、終わったと思っていたのはおれだけだった。 「気持ち良かった。じゃあ、次はベッドでしよう」 「え?まだするの?」 「あたり前だよ。全然満足してないよ」 そう言って冬夜はおれをベッドに上げる。 「も、もう無理……」 「もっと、伊織ちゃんのこと汚したい……」 冬夜はおれの言葉を無視してそう言うと覆いかぶさってきた。 その後はいつものようにおかずにされ、それはメイド服がべとべとになるまで終わらなかった。

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