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第3話

「俺の…部屋だと?」 「あぁ、お前の部屋に行く。お前の最後の砦であるお前の部屋で、お前を初めて抱くんだ。この家にお前の本当の居場所が俺のところだけだと分からせる。」 ゾッとするようなことを、俺に微笑みながら一が言う。 「さて、行くか。」 ビクッと体が揺れる。 「嫌…だ。お前とだなんて…番になんて…絶対に嫌だ…」 肩に担いでいた俺を一が胸の前で両手に抱き直し、俺の顔を見つめた。 「だが、それしか方法がないとお前は分かっているだろう?」 歩き出した一の胸を腕を突っぱねて拒否する。 それでも全く動じずに歩き続ける一にΩの力ではαには勝てないんだと思い知らされる。 いつの間にか俺の部屋の扉の前に立った一がそのノブに手をかけた。 「嫌だ!入るな!俺の…俺の部屋だ!入らないでくれ!」 一の上から扉に手を当てて開かないように力を入れる。 「まだ抵抗するのか…だから無駄なんだって!お前にはもう俺と番になるしか、この家でαの全様でいられる方法はないって理解しろよ!」 そう言って、俺を腕から下ろした。 「お前が自分でこの扉を開けて、俺を部屋に入れるんだ…番として俺をこの部屋に入れろ。」 一の言葉に足が震え、絶対に嫌だと身体中が拒否する。 俺の部屋に俺自身の手で一を入れる…だと? 「っざけるな!俺はお前を受け入れたりしない…絶対に受け入れない!俺には…俺には沢が…」 俺の顔のすぐ横の扉にバンと一の手が打ち付けられた。 「お前は俺の番だ!いいか?!お前は俺のモノになったんだ!…分かったらさっさとこの扉を開けろ!αとしてこの家にいたいなら、俺の言うことを聞くんだ。お前に選択権はない…それがΩとしての今のお前だ。」 ぐっと歯を食いしばり、あふれ出そうになる涙を我慢する。 「開けろ…いいか?開けろ。」 もう逃げる事も拒否する事も許されない。 俺はΩなんだ… 震える手でノブに手をかけて扉を薄く開ける。瞬間一の手がバンと扉を押し開いた。 「俺を受け入れるんだ…全。」 トンと背中を押され、部屋に転びそうになりながら入る。その俺の手をぐいっと掴み上げた一の後ろで、もう逃さないと言うように扉がバタンと閉まった。

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