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第12話
何度も何度もうなじを噛まれ、胎内が一の体液であふれていく。何度も果て、力の入らない身体では抵抗も出来ずに、されるがままに一の全てを受け入れる俺の心に唯一ほのかに灯る希望。それを想う事で、俺はこの現実の辛さから少しでも目を逸らせたかった。
沢。
俺の運命。
いつか、番として沢と…
急に性器を掴まれ、ビクンと腰が跳ねた。
俺達が双子だからなのか、時々相手の心の声が聞こえるようなことがあった。
今も、俺の心の声に反応するように一が大声で俺に絶望を与えてくる。
「俺の事を見ろ!いいか?運命なんてただの幻想だ!今のお前は俺の番だって、いい加減理解しろ!!」
「やだ…俺は沢と…沢と…ひぃっ!やめっ!もうやめ…ろ、やめてく…れぇ!」
何度目かもわからないうなじへの痛みと、首筋を流れる赤い筋。逃げる腰を掴まれ、奥深くまで侵入した一が俺の胎に自分のものだとでも言うように分身をぶちまけていく。
「さ…わぁ…沢ぁ…っすけ…てぇ!もう、もうイヤだぁ!俺は…もう…ぅあああああああっ!」
沢の名を呼ぶ度に、噛まれるうなじ。
それでも、口からついて出るのは愛しい運命の名。
「いい加減にしろ!もう、お前の匂いもあいつには届かないんだよ!お前はもう沢と番にはなれねぇんだよ!」
心が引き裂かれる。苦しくて苦しくて。どうにもならない現実を俺に突きつけてくる、もう逃げられないんだと。それでも…
嗚咽の混じる喘ぎ声をあげる俺に一の腰がぐぐっとくっついて、またも温かいものが流れ込んでくる。
激しい想いをぶつけるような行為が落ち着き、ようやく一の身体が俺から離れた。荒い息が少し整った頃、一が俺の体に触れた。また抱かれるのかと思い身体が硬くなる。
しかし、一はハハッと笑って面白そうに言った。
「全の身体、ベタベタだな…シャワー浴びて…って、おい、立てるか?…やっぱり無理そうだな。」
そう言うと一が突然俺の体を両手で抱き上げた。
本当は手を突っぱねて抵抗の意を示したいが、まだ息をするのがやっとな身体に力は入らず、指を動かすのも難しい。
結局はそのまま部屋に備え付けられてあるシャワー室に一に抱かれたまま入ると、一があぐらをかいてその上に俺を座らせた。上から降ってくる温かいシャワーが強張っていた俺の体を緩ませていった。
自分でやると言う俺の言葉を無視して一が石鹸を手につけて、俺の身体を洗い始めた。しかし段々とその手の動きが洗うそれとは違くなっていく。必死で抵抗するも、すでに俺の弱い部分を把握しているのか、的確に責められ続けた俺の身体はその力も失っていった。
「あっ!もうっ!もっ…無理…んあっ!やめて…やめて!」
それでも嫌だとなんとか頭を振る俺に、その頭を掴んで一は俺をΩの現実と言う谷底に突き落とした。
「お前の意見なんか関係ねぇよ。いいか?Ωのお前がαの俺に何かを言う権利なんてねぇんだよ!全ての権限はαである俺にある。俺がヤりたい時にヤる。俺がαでお前はΩなんだと、αと番となり、その庇護の下でしか生きられないΩなんだといい加減に自覚しろ!そして、他のαとはもう番になれないってこともな…っ!」
そう言って俺の中をシャワーの湯と石鹸の泡と一緒に一が入り、侵していく。
兄弟で双子で、それなのに今や俺は一の手にその命運を握られ、全てを持つ者だった俺は、全てを持たざる者になった。
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