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第21話
「さて…」
一が俺の体を自分の体から離す。
「一?」
「俺のいうことを聞かなかったようだな?」
びくっと身体が跳ねる。
そうだ、誰も入れるなと言われていたんだ…
「…っめんなさい…いちぃ、ごめんなさい…」
謝る俺の頭を掴んで一が唇を合わせる。久しぶりの濃いキスに熱を持った身体がもっともっとと一に縋り付く。
「ヒートか…終わればまたいつも通りというのが勿体無いな。」
「一?」
「なんでもない…まぁ、今言ってもお前がどれくらい覚えているのか疑問だが、番持ちのヒートはその体を他の者達から守る為、一種の恐怖状態になるんだ。番以外の者が、特に妊娠可能なαに対して、その姿がいつもとは違くなって見え、その恐怖によって自死を選ぶ場合もある。それが分かっていて、父さんも沢もお前を…許さねぇ…絶対に…」
「いちぃ…顔、怖くなってるよ?」
血走った目でどこか一点を見つめている一の顔をそっと両手で包む。
「あぁ…俺が怖いか?」
俺の手を取り、手のひらに唇を押し当てる。
「ううん!一は怖くない。他のみんなはものすごく怖かったけれど、一は怖くない。」
答える俺にそうかと嬉しそうに笑うと、一が俺を押し倒した。
「お前がヒートから治った時、仕置きが待っていることを忘れるな!だが今は、お前と初めてのヒートだ。しっかりと味わい尽くさせてもらう…そして二人の子供を作ろうな?いいだろう?全。」
「お仕置き、痛い?」
「そりゃあ、痛くなきゃ仕置になんねぇだろう?」
「どれ位?」
「お前のこの可愛い手首と足首を折って、お前がどこにも行けないようにする。」
「また歩けなくなっちゃうの?」
やだなぁとため息をつく俺に、仕方ないだろう?と言って、一が唇を足首に押し当てる。
「お前が言うことを聞かなかったんだ…抱き上げてやるから我慢しろ!」
「ご飯は?」
「食べさせてやるよ。風呂も…トイレもな。」
「やだぁ!!」
ジタバタと動かす足を掴んでうるせぇと言うと、そのまま唇が股間に向かって行く。
「いちぃ!!」
「なんだ?」
「大好き!!いちぃ!!愛してるよ、いちぃ!!!」
一の頭をぎゅっと抱くようにして、自然と言葉が出た。
「ヒートの時だけのご褒美だな…それでも全、嬉しいよ。俺も愛してる。全!!」
先程までの恐怖だけの行為とは違い、俺の体を一の手が触れるたびに熱く、舌が舐めたところには電気が走り、それが身体中に広まって、快感と愛しさが体から溢れ出て行く。
「勿体無いよぉ!一とのいい気持ちなのが体からこぼれちゃって、勿体無いよぉ!」
「大丈夫だ!俺のお前への愛はそんなことでなくなるようなもんじゃないからな…覚えておけよ、全。俺はお前を愛し、守る。そして俺がお前の命も…」
「一が欲しいなら上げるよぉ!!だから俺をもっと気持ちよくして!!愛してぇ!!」
「ああ、俺がお前を何回でもイかせてやる!!全、俺の全ーーーーー!!」
ドクドクと注がれる一の体液が胎の奥に染み込んでいくのがわかる。
溢れ出るほどの一の愛を俺の体は全て受け入れて静かに目を瞑った俺の耳に、遠くから赤子の鳴き声が聞こえた気がした。
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