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第37話
ドクン、ドクン、ドクン、ドクン
身体がまるごと心臓になったかのように鼓動が頭から足の先まで響く。
先程までの熱さとは比べ物にならない程の沸騰しそうなほどの血流が身体中を駆け巡り、貧血を起こしそうなほど全ての血が一点に集まっていく。
腰が無意識に動き、中からトロッとした愛液が垂れ出しシーツを濡らす。
「あ…あぁ…はぁああ…あぁあああ…」
口から出る吐息と甘い声に沢の喉がごくんと動いた。
近付く沢の手。
大きくて、強くて、俺を押しつぶしそうな手。
この手に捕まったら俺はどうなるんだろう?
ガタガタと震える身体。両腕で自分の体を抱きしめてその震えを止めようとするが、それは激しさを増し、止められない。
「や…だ…怖い…怖い…助け…て…いやだぁああああああああ!」
我慢できずに悲鳴が口を突いて出る。
「いちぃいいいいいいいいいいい!!」
一の名前を叫び、助けを求める。
しかしそれをすぐに沢の手で塞がれ、沖が黙って渡した口への拘束具を二人がかりで付けられる。
それは一のものとは違い、完全に口を開けない。
嫌だ嫌だと喚いても、出るのは意味のない音ばかり。
「このような物を付けて苦しいとは思いますが、全様が舌を噛み切らぬように付けさせていただきます。全様の命を守るため…どうかお許し下さい。」
俺の子の命を奪った!こいつらは俺と一の子の命を奪った!
それで俺の命を守る?!
違う!こいつらは俺を犯し、身体を征服して俺と一を引き離す気だ!
嫌だ!一を俺から奪うな!助けて!一、助けてよぉお!
心の中で叫び続けても誰にも届かない声。
薬で痛みのない手足をバタつかせ、沢から逃げようと身体を起こす。
しかし、ベッドの上から伸びた沖の手に握られた拘束具を付けられ、遂に逃げられない事を悟る。
「それでは、私は外に出ております。全様、沢さんこそがあなた様の運命の番。その身体も心も全て沢さんに委ねれば、きっと素晴らしいお子様がお出来になりますよ。大丈夫、先程の媚薬が全様の恐怖を快楽に変えてくれるはず…それではごゆっくり…とはいきませんので、一様の戻られるまでに終わらせてくださいね。失礼します。」
沢が沖に向かってありがとうと言うと、ふふっと微笑んで沖は外に出ていった。
「全様…今日こそは、私の子をあなたのお腹に宿します。よろしいですね?」
ぶんぶんと横に首を振って嫌だと言う意思表示も、沢は大丈夫と笑って俺に覆い被さってきた。
その目はギラつき、近付く口から剥き出しの歯が俺の心を恐怖に駆り立てる。
俺の沢はこんな獣のようなやつじゃない!
嫌だ!怖い!いちぃいいいいい!
身体中を這う手と舌に身震いする。まるで初めて一に抱かれた時、いや、それ以上の嫌悪感に涙が止めどもなく溢れ、しかし沖の言った媚薬のせいなのか、快楽がだんだんと俺の身体を熱くしていく。
嫌なのに、辛いのに、怖いのに、それでも気持ち良いと身体中が叫び、沢の指が俺の中を激しく掻き回すのを、腰を揺らしてもっと奥へとねだる。
それでもやはり恐怖は消えず、恐ろしさと快楽に身体がまるで夢の中にいるような不思議な感覚に陥っていく。
ぐちゅぐちゅと沢の指が数本入って十分に解されたそこに、まるで凶器のような沢の性器が押し付けられ、ぬぷっと愛液を押し出しながら入って来た。
「んんん!んーーーーーーーーー!」
頭を振って嫌がる俺の腰を掴み上げ、一気に突き刺す沢のまるでケダモノの交尾のような行為に恐怖も快楽も忘れ、まるでどこか遠くからその行為を見ているかのように、何の感情もなく身体を揺らされる。
「くぅっ!全様!私のモノだ!私の全様!全さまぁあああああっ!」
奥深くを沢の体液で満たされ、それが体内に染み込んでいく。
もう、嫌だ…Ωである事も、何もかも…嫌だ…助けてくれ…誰か…俺をこの地獄から救ってくれ!
どくどくと流れ込む沢の体液が行き着く場所。
あぁ、もうこれで一との番も解消させられてしまう。
悔しさと辛さに、それまでとは違う雫がこぼれた。
瞬間、バタンと開けられた扉。
全!と俺を呼ぶ愛しい声。
沢の腰が一気に離れ、くそっと悪態を吐きながら扉とは反対にある窓を開けると、足をかけた。
「私はいつまでもあなたの運命の番。ここで地獄に堕ちようと、あなたの元に戻ってきます。全様!私達の子をどうかよろしくお願いします!」
そう叫ぶとその身を翻した。
「沖!捕まえろ!」
「はい…」
扉の外に向かって叫ぶ一に答える沖の声。
それを途中で塞ぐように扉を閉めると、一が服を脱ぎ捨てながらベッドに走り寄ってくる。
「全、すぐに俺が上書きしてやる…あいつの精子なんか全て俺の精子で殺してやる!」
ぐいっと腰を掴まれ、ごめんなと言いながら一の腰が一気に俺の腰にくっつく。
その激しさに、先ほどまでは訳もわからずに揺らされていた身体が、一の性器になった途端に、気持ち良さと幸せで満たされ、痛みも全てが快楽へと変わり、拘束された口からは先程までの苦しいうめき声ではなく、甘い喘ぎ声があふれる。
「ん!んん!ん…ん…んんんーーーー!」
「全、いいか?出すぞ!俺の子をもう一度宿すんだ!」
「んんんんんんーーーーーーーーーーー!」
沢の精子が残る体内に一の精子が入り、二つが混ざり合って体の奥深くに向かって行く。
一の手が俺の口の拘束具を外して、唇を合わせた。
「いちぃいいいいい!俺を捨てないで!番を解消しないで!いちぃいいいいい!」
泣きながら一に願う俺の頭を抱きしめ、大丈夫だと繰り返す一に何度もその体液で満たされ、快楽と幸福にあふれる身体を抱きしめて、俺は目を閉じた。
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