42 / 106
第42話
「全…悪かった…いつものヒートと違って、本当にいつも通りのお前が俺を愛してくれてるみたいで嬉しくて…つい悪ノリし過ぎた…ごめん…」
一がベッド側で俯いたまま、呟くように話す。
俺も少しずつ気持ちが落ち着き、先程までのことを思い返して起こる気恥ずかしさで、一から反対の方を向いてもういいよと呟いた。
「なぁ、気分はどうだ?」
そっと髪に触れる手に体が跳ね、一が驚いて手を離した。
「あ、やめないで…頭、触っていて、欲しい…」
顔を一に向けて焦ったようにいう俺に、一が一瞬目を見開いてから微笑んだ。
「分かった…でも、頭、だけでいいのか?」
変に強調したように頭と言いながら俺を見る目に、意地の悪い光が見える。
いいよ、頭だけで…怒ったように言った俺の事をニヤッと笑い、じゃあ、頭なと言って手を股間に下ろす。
「え?一!やぁっ!っまんできな…ぃからぁああああああああっ!」
ぐにぐにと先端を弄られて、ずっと我慢し続けてきた熱が一気に放射された。
「早くね?」
そう言いながら、扱き出した手に翻弄されるように腰を揺らして甘い声を紡ぐ。
先程までのギスギスした部屋の空気を覆っていくように、甘い空気が部屋を満たしていく。
「頭…だけって…あっ!あっぁあああああああ!」
「だから、こっちの頭をさ…ほら!俺はお前のこの頭をいじって気持ちよくさせるのすっげー好き。全、お前は?」
問いながらもグニグニと刺激を加えながら扱かれ、俺の腰がベッドから離れていく。
「す…好きぃ!頭弄られ…っの好きいぃ!」
「全、仲直りしよう…俺ももっとΩの事を色々と勉強して、お前が辛い思いをしないようにするからさ。だから全、俺を、番の俺をいらないなんて、子供達もいらないなんて言わないでくれよ!もう、俺もお前も家族はお互いだけなんだから…」
「い…ま、言う…のズルい。一こそ…俺を嫌にな…ったんじゃ…あぁあああっ!」
馬鹿だなと言いながら、一が俺の腰を抱いて自分の腰を押し付けてくる。
「全がどんなに俺を嫌いだ、嫌だと言ったって、俺が全を嫌いになる事はねぇよ。今までだってそうだったし、これからもずっとお前だけが俺の兄弟で、家族で、番だ…やべぇ、俺も…っまんできねぇ!」
そう言って激しく腰を動かし、苦しそうに口を開けて俺の名を呼ぶ。
その声が大きく激しくなり、俺の奥が温かい液体で満たされていく。
幸福に満たされ、この世の何よりも一が愛おしいという想いで心がいっぱいになった。
「いちぃ、愛してる。愛してるよぉ、いちぃ。」
我慢できずに一に抱きつきたくて動かせない手を必死に動かす俺を無視するように、一が体を離してベッドから下りようとする。
「一?何で、行っちゃうの?なぁ、一ってば!」
無言で片足を床につけた格好の一の体が小刻みに震える。顔を上げて一を見ると、その顔は青ざめて汗がダラダラと滝のように流れ、今にも倒れてしまいそうで、俺は恐ろしさに声を上げた。
「一っ!いちぃ!どうしたんだよ?一ぃ!」
伸ばしても届かない手、ガチャガチャと鳴る鎖の音。
必死に名を呼ぶ俺に、ようやく一がこちらを向いた。
「一…ぅあっ!」
名を呼んだ俺の腰をぐっと掴むと、その体を反転させてうなじに歯を立てながら奥まで一気に抉られる。
「いっ…ちぃいいいいいいっ!」
叫びを無視して無言のまま俺の体を激しく揺さぶる一。噛んだままのうなじに深く入っていく一の歯。それでも俺に恐怖はなく、いっそこのまま噛み殺されてもいいなと思うほどに、痛みよりも幸福感が俺を何度も絶頂に導き、シーツが赤色に染まるのを遠のく意識の中で静かに眺めていた。
ともだちにシェアしよう!