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第51話
「あの…さ…」
今日も部屋に入ってベッドに腰掛けながらうなじの噛み跡を指でなぞっていた沖の手が止まって、俺を見た。
「どうしましたか?いまさら、私に抱かれたくないとか?」
「ひがう!なぁ、これ…」
口の拘束を取って欲しいと視線で訴えると、沖が仕方ないですねと言いながら慣れた手つきで外してくれた。
最近は息苦しさを感じたり、きちんと喋りたい事がある時には、こうやって訴えると口の拘束だけは外してくれるようになった。
「全様、どうかされたんですか?」
もう、こうやって沖に抱かれるようになってどれほどの時間が経ったのだろうか?すでに子供のいる腹は針でつついたら張り裂けそうなほどに大きく膨らんでいた。
「なぁ、寝る時にやっぱりまだ苦しいんだ…もうちょっと手を緩めるとかしてもらえないかな?」
沖は相変わらず俺の部屋には通って来るだけで、コトが終わればさっさと部屋から出て行ってしまう。すでに腹が大きくなり出した頃に仰向けで寝るのは苦しいと言った俺のために、横向きで寝られるくらいには緩ませてもらってある手の鎖だが、それもここ最近は苦しさが増し、ずっと我慢していた事を話せて俺は少しほっとした。
「あぁ、これは私の落ち度ですね。申し訳ありません。それで、お腹の子供の状態はどのような感じですか?」
沖が手の鎖を緩ませてからどうですかと聞き、俺が大丈夫だと頷く。それを見て満足そうに沖も頷くと優しく俺の腹をさすった。
「どうだろう?もうそろそろ産まれる時期…だよな?」
「えぇ、そうですね。」
「そう言えば、この子供達を育ててくれる人を探すって言ってたけれど、見つかったのか?」
前に沖が言っていた乳母の話のことを思い出して尋ねた俺の言葉で、沖の手がぴたりと止まった。
「どうしたんだ?」
沖の手が今度は俺の顔に触れ、再びうなじの歯形をなぞる。
「ねぇ、全様?動物というのは怖いモノですよね…自分が気に入ったメスに子があると、その子を殺して自分の子を産ませる…でも、人も結局は動物。他の者の子よりも自分の子を残したいと望むのは当たり前のことだと思いませんか?まぁ、人間には殺人罪というものがありますので、子供を殺す…のはさすがにしないと思いますけどね。」
しないと言いながらも俺の腹を見つめる沖の目がケモノのようにギラっと光り、その言葉と共に寒気を覚えた身体がブルっと震えた。
「沖…何を言って…いるんだ?」
青ざめた顔の俺に沖がくすくすと笑って唇を合わせる。
「こんなに唇を震わせて、寒いのですか?」
「沖!俺の問いに答えろ!…っんな…やめろっ…ぁあっ!」
無理矢理に開かされた身体に、いつもならば体を労るように抱く沖とは思えぬ激しい動き。久しぶりに一気に突かれた奥は、その痛みと気持ち良さに頭から理性を追い出してもっともっとと無意識に腰を動かしていた。
「全様…そんなに私を煽ったら本当にお子様達をどうにかしてしまいますよ?これ以上奥はさすがにまずいんじゃないんですか?」
くすくすと笑いながらも、止める気のない腰が激しさを増し、分かっていても俺も自分を止められなかった。
「だめ…子供…だめ…やぁっ!…沖ぃ!…だめ…やっ!奥…っともっと奥!気持ちいいとこ…奥ぅ!」
体は激しく揺れ、言葉にならない言葉が沖を煽る。子供の為とずっと我慢していた身体はタガが外れたように沖のモノを求めて奥に奥に導くのをやめない。
「これは…全様…よろしいのですか?ここを突いたら本当に…」
ごりっと沖のモノが俺の奥を抉る。ぞくんと身体が跳ねて腰が震える。
「だめぇ!…けど、止まんない…止められないよぉ…沖ぃ!」
激しく動く身体が鳴らす鎖の音、欲しくて上がっていく腰。汗と涙でぐちゃぐちゃになっても俺には止められない。
遠くで子供の泣き声が聞こえた。
「沖、助けて!俺と一の子を、沢の子を助けて!」
叫ぶように哀願する俺を沖が抱きしめて囁いた。
「助けましょう、それがあなたの望みなら…しかし、産まれ出た後は…」
「え?!」
聞き返す俺の奥を沖のに抉られて、体がのけぞる。
「あっ…ぁあああああああああっ!」
奥に感じる熱さに押されるように、俺の熱も吐き出されていった。
「全様…番となったのですから、私との子もたくさん作りましょうね…」
肩で息をつく俺に甘く優しい沖の言葉。それと共にうなじに当たる歯を感じて目を瞑る。
甘い言葉からは想像もつかないほどの鋭く尖った獣のような牙が皮膚に食い込み、痛みに顔が歪む。どくどくとうなじから流れ出る血。シーツが赤く染まるのを見ながら、今夜はこれで終わりかと少し物足りなさを感じている体に諦めろと言葉をかけた。しかし、いつもは俺から離れる沖の体が俺から離れずに再び動き出した。
「沖…?」
いつもならば首の傷の治療をして、さっさと一の待つ部屋に戻る沖が、再び俺の中でムクムクと大きくなっていく。
「今夜はあなたの中が居心地がいいようですので…お付き合い下さいますか?」
「…嬉しい…」
無意識に出た言葉に顔を赤くする俺に沖が微笑む。
「可愛い私の全様…」
抱きしめられた肌の温もりを感じて俺は子供のことも忘れて、悦びの中で一晩を過ごした。
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