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第59話

「あっ!ダメっ…んんっ!そこ…いじめ…ない…っぁああああああっ!」 「んー?ダメじゃないだろう?ここ、こうやっていじめられるの、好きだろう?」 カリッと乳首を爪で引っかかれるような刺激に腰が震える。 「そこ…ばっか…ひぁああっ!むりぃ…もっ…むりぃいいいいいいっ!」 ドクンと腰が跳ねて、白い液体が体にかかる。 「全、乳首だけでもイけるもんな…可愛いよ、全。」 一に頭を撫でられ、無意識にすりすりと自分から一の手に頭をもっと撫でて欲しいと擦り寄っていく。 「俺にされて、気持ちいいか?ん?」 一の言葉にはっと気が付いたようにプイと横を向いて、でも嘘はつけなくて頷いた。 「じゃあ、もっと気持ち良くしてやろうな…実は抱かれる側になってから、気持ちがいいところが色々と分かってさ…だから全の事、今まで以上に気持ち良くしてやれると思うんだ。」 「え?あれ以上に?」 一と番として愛されていた時も、何度もおかしくなりそうなほどに気持ち良くされたのに…それ以上に気持ち良くって… ごくりと喉が鳴る。 「ふうん、俺の言葉だけでこんなに目を潤ませて…本当にかわいいよ、全…愛してる…愛してるよ…全。」 そっと顔に触れられ、ビクッと体が跳ねる。 最近はずっと甘い言葉もなく、ただ入れられて精液をぶちまけるだけの愛され方しかしてこなかった俺の心と身体が嬉しくて気持ち良くて、そして幸福で…俺は一を今まで以上に感じたくて、もっともっと奥にくれと泣きながらねだっていた。 これは沖じゃない。 心から憎み、絶対に許さないと決めた一なのに… そうやって心の中では葛藤しながらも、身体は快楽に震え、気持ち良さに自分の今の状況も忘れて、我慢できずに声を上げていた。 そう、まるで一が番の時のヒートであるかのように俺には一しか見えなくて、一にもっと愛されたくて、喘ぎ声を出して一を煽った。 「一の…俺に合う…のかな?すごい…あぁっ!っもちいいんだ…んんっ!もっと…もっと奥に…あの偽物じゃ…届かない…俺の奥ぅ…ひぁああああっ!そこっ!もっと突いてぇ!奥ぅ!もっともっと…俺を感じさせてぇえええええっ!いちぃ!ぁあああああああっ!」 「全、煽るの上手くなったな…偽物って、あの俺ので型を取った張り型の事か?あぁ、偽物なんかじゃ満足できなくなるようにしてやるからな…全っ!」 俺の腰をぐっと掴んで奥を抉り突きながら一が俺の奥に精液を流し込んでいく。 「あっ…はぁああああああ…あったかい…一の精液…俺の奥にもっともっと…ちょうだい…一の子供…欲し…ぁああああああっ!」 俺の言葉をかき消すように一の腰が激しく動き、俺は最後まで言わせてもらえずに悲鳴を上げた。ぐぐっと今まで以上に腰がくっつき、奥に向かって温かい液体が流れ込む。 「全、それは言ったらダメだ…でもいつか、お前と子供達と暮らそう。明るくて暖かい太陽の下で、俺はお前を何度も愛して、そのうなじに歯を立てるんだ。」 「うなじ…うなじ噛んでよぉ!もっともっと気持ち良くなりたい。だから…ねぇ!」 一の手が首に触れて、俺につけられている首輪をぐっと引っ張るが、それは全く動かない。 「鍵がついてますからね。それを取ることも、ずらすこともできませんよ。」 舞台下から沖の声が飛んできた。 「くそっ!全、いつか噛んでやる。もう一度お前と番になる。俺は絶対にもう一度お前と…」 「もういい!二人を引き離せっ!一は私の部屋に連れて行け…あぁ、ヒート誘発剤を、そうだな…3本ほど打っておけ。」 そう言って、後ろの席にいた男が部屋を出て行く。舞台下の客達も覆面の男達に導かれて部屋から出て行った。喧騒の消えた部屋、沖が手を上げると、それを合図に舞台に駆け上がって来た覆面の男達が俺の中から一を引き離し、嫌がって身を捩る一を数人がかりで床に押し付けると、注射器を持った沖がにやにやと笑いながら一にゆっくりと近付いて来た。 「やめろっ!嫌だ!もう嫌だ!」 「腕を固定しろ!」 沖の声に覆面の一人が一の腕をぐっと掴んで床に押し付けて固定する。そこに沖が一本目の注射を打った。すぐに一の呼吸が荒くなり、それを見て沖が後ろに控えている覆面の男から受け取った注射器をその腕に立て続けに2本刺す。 ガタガタと震えながらも俺をじっと見つめていた一の口が俺に向かって動いた。 「待ってろ。絶対に助ける。」 そう言って、一はガクッと体から力が抜けて意識を失った。 「ふむ、さすがに3本はきつかったか…さぁ、彼の方の待っている部屋に連れて行きなさい。」 指示を受けた覆面の男が一を抱き上げて部屋から出て行く。 俺はその姿をじっと見守り、一が部屋から出て、その扉の閉まるまで見届けた。 「さて…全様にはお仕置きが必要なようですね…私以外の男に子を欲しいとねだり、うなじを噛んでくれと望むとは…Ωになったから、元の番だからとか、言い訳は聞きたくありません。あぁ、これこそが嫉妬なのでしょうか?なるほど…あなたをひどく愛したい感情と辛く苦しい目にあわせたい。そんな感情が心の中で渦を巻き、私の身体を引き裂くようだ。」 「沖…?」 ふっと笑った沖の目はまるで張り付いたような微笑みで、俺はぞくっと寒気を感じてベッドの上で身を捩った。ジャラジャラと鳴る鎖をぐっと掴んだ沖が帰りますよと呟くと、覆面の男達が俺の鎖を外して抱き上げようとした。 「触るなっ!」 沖の手が男の手をピシッとはたき、皆がギョッとした目で沖を見るが、沖は全くそれを意に介さずに俺を自分の手で抱き上げると、そのまま部屋を出て俺の部屋に向かって歩き出した。 「沖…どうしたの?」 「今は喋らないでください…そう、私の理性が部屋まで保つように心の中でお祈りでもしていて下さいますか?…今夜は寝かせるつもりはありませんので、そのつもりで…愛していますよ、全様。」 そう言って俺を見下ろした沖の目に、顔を赤くする俺の顔が映っていた。

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