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第76話

「…様…ん様…全様。」 俺を呼ぶ懐かしい声が耳をくすぐる。 「だ…れ…?」 「まだ、お眠いのですか?でも、そろそろ起きていただかないと、ご主人様達との朝食に遅れてしまわれますよ?」 「ご主人…って、一の事?」 「一…とはどなた様のことでしょうか?」 え? うつらうつらしていた目と頭が一気に覚醒する。 「何言って…って、沢?」 俺の服を支度しながら、いきなり起き上がった俺に驚いた沢の目と合った。 沢は懐かしい前の家の執事服を着て、手に俺の服を持ちベッドに近付いて来た。 はっと周囲を見回すと、そこは焼けたはずの俺の家、そして俺の部屋。 全てが懐かしい記憶のままの姿に一瞬景色が歪むが、それを腕で拭うと沢に尋ねた。 「主人が一じゃなかったら…じゃあ、誰が俺を待っているんだ?」 「この家でご主人様と言ったら、今日までは全様のお父上でしょう?それと、先程から言われている一、とはどなたの事でしょうか?」 「え?!」 「あぁ、本当にお時間が…さぁ、早く着替えて下さい…全様。」 「あ…うん。」 手を出すと、沢がささっと着替えを手伝ってくれる。 背中からシャツを羽織らせながら、沢の唇がうなじに当たった。 「時間…ないんだろう?」 ぴくっと反応する俺の顎に手をかけ、後ろに傾けさせるとそのまま唇を合わせていく。 「んっ…さ…わ…んんっ!」 俺の手が気持ち良さに沢の肩を掴んで崩れそうになる体を保つが、それも束の間、手からも力が抜けてずるっと肩から落ちた。 沢の腕がそんな俺を支えながらベッドに押し倒していく。 「時間…ない…んじゃ…はぁっ!」 「そうは言っても、こんな状態でお食事なんてできるのですか?」 「おま…えのせいだ…ぁあああああっ!」 つぷっと沢の指が俺の中に入ってくる。 「ん…くぅっ…ぁあっ!あっ…はぁあ…あっ…っこ、そこだ…めぇ!やぁああああっ!」 「イヤって言いながら、こんなにたくさんこぼされて…はしたないですよ、全様。」 「だって…おまえの指…気持ち良くて…」 ぴくっと沢の眉が上がり、はぁとため息をつく。 「俺、なんかヘンな事言っちゃった?」 心配になって沢の顔を覗き込もうとする俺の体に腕がまわり、ぐるんと腹這いにされる。 「沢、ダメだってば!本当にもう時間が…」 ベッドをずり上がって逃げようとする俺の足首を持ち、指を一本一本口に含まれ、舌で舐められていくのがくすぐったくて、変な感じで、足をばたつかせるが、沢はお構いなしに俺の足を舐め続ける。 「それやぁっ…だって…くすぐ…ったい…んっ!はぁああっ!」 そこへ扉をノックする音が聞こえ、俺は声を出さぬように口を両手で塞いだ。 「何だ?」 沢が何事もなく対応するが、その手には俺に今にも突き刺そうとする硬い凶器。 ごくっと喉が鳴りイヤだと頭を振る。 「ご主人様が全様が遅いのでどうしたのかと尋ねられまして…」 ぴたっと尻に当てられ、ぞくんと背中が反る。何とかそれから逃げようとベッドをズリ上がろうとするも、片足を持たれたままの俺はすぐに沢に引き戻される。 足を掴んでいた手が俺の腰をぐっと掴み、、嫌がる俺に問答無用で自分の腰をぐぐっと押し付けた。 「ーーーーーーーっ!」 両手の中に広がる声にならない悲鳴を上げながら俺は体を揺さぶられ、涙を流しながら沢を睨むが、沢はそんな俺を見てふふっと笑いながら、腰を激しく動かしつつ口を開いた。 「少々、頭痛がするとの事ですので、お薬を飲んでお眠りになっています。時間までには治られると思いますのでご心配なくと伝えて下さい。私はこのまま全様の看病をします。あ、しばらくはこの辺りに人は寄越さないように。」 ぱんぱんと腰をリズム良く鳴らしながら、沢は扉の向こうの使用人に冷静に指示を出していく。 「んっ!んんっ!」 漏れ出る声を我慢できず、甘い声が部屋に響く。 「大丈夫ですか?」 扉から離れようとした使用人の耳にも届いたらしく、声をかけて来た。 俺は青ざめて口を両手で先ほどよりもきつく覆うが、沢の方はそれを見て意地悪そうな笑顔を俺に見せた。 「あぁ、大丈夫ですから、あなたはご主人様に早く伝えに行って下さい。くれぐれもここに人は来させないように…いいですね?」 「分かりました…失礼致します。」 カツカツと靴音が去って行く。 瞬間、グンと奥深くに沢のが侵入し、俺は両手でシーツを掴んで悲鳴を上げた。 「いぃっ…ああああああああっ!! 「ダメですよ…そんな大声を出したら、聞こえてしまうじゃないですか?」 「誰の…せい…ぁああああああああっ!!!」 俺の抗議に聞く耳はないとでも言うように、激しく腰を動かして俺の中をゴンゴンと音がするほどに突いてくる。 「やぁっ…ぁあっ!ダメ…もっ…それい…じょうは…奥ぅ…だっ…めぇ…あっ!はぁあああっ!」 沢が俺の背中に自分の体を密着させ、ぐいぐいと奥へ奥へと自身を捩じ込んでいく。 「ぐぅううっ!ぁああ熱いっ!お腹…いっぱいで…沢の…熱いぃいいいいっ!」 「本当にあなたは私を煽るのがうまい…あぁ、ようやく私のモノになっていただけるんですよね…全様…今宵、あなたのこの滑らかなうなじに私の歯形を付けられるのですね…私の運命の番…全様…今は当てるだけで我慢して下さいね…全様、愛しています。」 カリっと歯が当たり、全身に電流が走って行く。 「ぁああああああああああああああっ!」 声が細かく震えて、俺はついに身体中を痙攣させるとシーツを汚しながら体を突っ伏した。その俺の腰を持ち上げて沢の腰に力が入り、俺の中がじわーっと暖かい液体で満たされていく。 ちゅっとうなじに沢の唇が当たるのを感じ、俺は仰向けになって沢を抱きしめると、それに応えるように動き出した沢の胸に顔を埋め、背中をぎゅっと抱きしめながら再び甘い声を出し始めた。

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