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第86話
「やめろ!やめ…ろ…やぁ…めっ…くぅうっ!」
「俺は全のいいところ、全て知っているからな…おっと!敬語にした方がいいか?ん?全様。」
「くぅっ!もっ…ぅう…さわるな…って…んっ!」
縛られてはいても繋がれていない手はある程度自由に動く。その手を必死に動かして下半身をいいように弄ぶ一の手を押し返そうとするが、感度のいいところばかりをいじられて俺の腕からは力が抜けていき、結局は一の手で頭の上に追いやられた。
「や…めぇ…いっ…ぁああああっ!もう…やだ…んっ…んんっ!」
動かしていた足はすでに一に降伏するように開き切り、俺の抵抗は口から出る言葉だけ。それもすでに言葉というには程遠く、一のにやにや笑いでゆるみ切った顔を思い切り張り倒すか蹴り飛ばすかしたいのに、どこも俺の思う通りに動いてはくれなかった。
「なぁ、もう観念しろよ?俺に気持ち良くして欲しいって言えばもっと気持ち良くさせてやれる…んですよ…全様?」
「ヘタクソ…」
「ん?何がヘタクソなんだ?」
一の目にギラッと睨まれて俺は一瞬怯む。しかも敬語がだよとは言わせてもらえないほどに手を動かされ、腰を震わせて声を上げていた。
「いぃあーーーーーっ!」
「ヘタクソの手でイかされたご気分はいかがですか?でも、全様にもっともっと気持ち良くなってもらえるように、ヘタクソなんて言われないようにたくさん練習しないといけませんよねぇ?練習に付き合っていただけますよね?あなたにヘタクソと言われたんですから。」
「ちが…っぁあーーーーー!や…指…抜い…て…ぬ…いてぇ…やめっ…やっ…ぁあっ!んっ!」
ぬぷっと体液を絡ませた指が入り、擦られて涙が勝手に流れ、俺は腰を揺らして喘ぎ声を上げる。それを見て一の顔がどんどん雄の顔へと変貌していった。
「全様…声が大きいですよ?ヘタクソなこの俺の指でそんなに喘ぐなんて…。まさか訳も分からずに突きまくるしか能のない俺の腰使いで、イきまくるなんて事はないはずですよね?」
「やめっ…やめて!やだ…こんな…の、嫌だ…やめろぉ!」
「全…どうした?ちょっと意地悪が過ぎたか?ん?」
俺の悲痛な声に一が今までの激しい言葉遣いと怖い顔を崩し、優しく俺の髪を撫でる。
「俺…やだ…こんな風に…無理矢理みたい…なの…もう嫌だ…」
「全…でもな、お前の事を待っていたら、俺はいつになったら一としてお前を抱けるんだ?俺の下半身はそんな簡単に待ては出来ないって、お前が一番知っているだろう?」
一が少しでも俺が苦しまないようにとふざけるが、その額から流れる汗と、俺の腹を擦る一ので相当な我慢をしているというのは分かっていた。
「し…ってる…知ってるけど!でも、たった今、葬式が終わったばかりで…その後すぐにって言うのはやっぱり…」
「なぁ?」
「え?」
「それってさ、全…様はもう私の指で一度その熱を外にお出しになったから言える言葉なんじゃありませんか?」
「それは…そうかも知れない…けど…」
ゆっくりと一の指が増やされていく。
「んんっ!ずる…い…やめっ!やめろって…んんーーーーっ!
歯を食いしばり、声を我慢する俺に一は自分のそそり勃つモノに手をかけて俺の中から指を抜くと、それを窄みに当てて俺の耳に囁いた。
「一度イってしまったらヤったのと一緒ですよ…全様。」
ググッと先端が入ってくる。
「ゆる…してぇ!やだぁ…だめ…だめ…ってばぁ!」
「地下に潜った男ですよ、時間がないと言ったのは…分かりますか?その言葉を聞いてからは今までよりもあなたと一秒でも長く愛し合いたいと…そう、時間は無限ではないのですから…どんな時でも私はあなたを愛し抱きしめていたい。あなたの中で私を感じてもらいたい。ですから、あなたがどんなに嫌がろうが私はあなたを愛します。そう、あの男に約束したんです…分かったら、もう嫌だなんて言わないで下さい…っ!」
一の話が終わると同時に奥に響く衝撃と圧迫感に唇を噛んだが、一の指が口を開けさせて舌を入れてくる。口の中をなぞられ、舌を絡め取られ、動かされる腰の動きに合わせて我慢できずに出る声をまるで飲み込むように俺の口を覆う。
「ふくぅっ!いいっ…ぁああっ!はぁ…ぁあ…ん!んーーーーーっ!」
「なぁ、呼んでくれよ!全!俺の名前を…呼べよ!全っ!」
「まだ…ま…だだめ…って…くぅっ!そこ…だめぇ!そこば…っかり、だ…っめぇえええええ!」
「そうかよ!まぁ、なんたって俺はヘタクソだからな!同じ所ばっかり突くしか能がねぇんだよっ!」
ずんずんと突かれて身体が上下に激しく揺さぶられ、縛られた手がシーツを掴む。足が引き攣ってツンと爪先立ち、声が細かく震える。
「ああああああああああっ!」
「キュンキュン搾り上げてくるなぁ。お前、ここ突かれるの弱いもんな…でも、今夜は嫌って言ってもやめないからな。突いて突いて突きまくってやるから覚悟するんだな。なぁ…全様…」
「もう…もっ…イっちゃ…イっちゃう!イくぅ…イ…っ…ぁあああああーーーーーーーっ!」
一の言葉通り一晩中突かれ続けた俺は、それでも一の名前を呼ぶ事はせず、朝になってようやく一から解放された。縛られた手をベッドに繋がれて、再び拘束される日々が始まるのかとため息をつきながらも、なんとなく懐かしいような変な気持ちで静かに眠りについた。
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