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第88話

包帯の巻かれた上からジャラジャラと音を立たせて鎖と拘束具を付けられ、痛みに涙を流す俺の顔を舌で舐めると、一の口に含んだ水を飲まされた。 乾いてひっついた喉が潤い、枯れた声が少しはまともになる。 「もっと…」 もう水も自分では飲めず、その全てを一の前にさらけ出す日々が続くのかと思うと嫌で嫌でたまらないのに、こうやって一に世話をしてもらっているとたまらなく嬉しい気持ちも湧いてくる。 何なんだろう? 一に水を与えられながらいくら考えても、このごちゃまぜの感情に答えは出ない。 唇が離れて、口からこぼれた水を拭き取った一が、ほんの少しだからと言って出かけようとするその背中に向かって、何故か「行っちゃやだ…」と心の中で呟いていた。 「ん?!」 一が何かを察したように振り向くと再び俺の方に戻って来た。 「な…なんだよ!?行くんならさっさと行けよ!!」 思ってもいない言葉を吐き、ぷいと横を向く俺に一はふーんと分かってる風な顔で頷き、俺の窄みに手を当てた。 「おまっ!今から行く…んだ…ろ…んっ…っめろよ…くはぁああっ!」 閉じた口を突くように声が漏れる。 「あのな、これ入れておいてやるの、忘れてたんだ…俺の型取ったヤツ。お前のお気に入り、なんだろ?」 「んっ!取れ…抜け…ぇってばぁ!!」 一が背中を向けたままで扉に向かいながら手をバイバイとひらひらさせる。 「取れよ!!んっ!くっ…くぅううっ!抜け…よぉ…」 「あ、それとなぁ、全?お前に飲ませた水に体の熱ーくなる薬入れておいたから…俺がいない間、そいつでじっくりとほぐしておいてくれよ?帰ってきたら、今夜も抱き潰してやっからさ!じゃあ、行ってくる。」 顔だけ振り向き、呆然としている俺にふふっと含み笑いを残して、一は扉を閉めた。 「おい、嘘…だろう?なぁ!嘘だよな!?」 大声で叫ぶ俺に一からの答えはなく、窓の外から先程も聞こえた扉の閉まる音。 「え?!ちょっと待てよ!なぁ、俺を一人にして置いていくなよ!!なぁ!!!」 窓に向かって吠えるもその声はガラスに阻まれて部屋に反響するだけ。 ブロロロとエンジン音が鳴り響き、それが段々と聞こえなくなっていくのを、追いかけるように行かないでくれ!置いていかないでくれと叫び喚く。しかし、ついにエンジン音が聞こえなくなり、耳の痛くなるほどの静かな部屋に残された俺。呆然とする間も無く、まるで一の言葉が嘘ではないと言うかの如く、身体は少しずつ熱を帯び始め俺を苛んでいく。ついに疼きを我慢できなくなった口からこぼれ出した喘ぎ声が、静かな部屋に響き始めた。

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