91 / 106
第91話
一の名前を頑なに言わず、それどころかどんなに責められても声を我慢する俺に、ついに一がブチ切れた。
「あぁ、そうかよ!!お前がどうしても俺の名前を呼ばないなら、俺もお前に入れない。このまま、おもちゃで慰めてもらうんだな!」
一の手で激しく出し入れされるが、際どいところばかりを責められるばかりで吐き出せないままの熱に苛まれた身体が、いい加減、楽にさせてくれと俺の口を開かせようとする。
ダメだ。
口を開いたら呼んでしまう。
一時の欲望に負けて一の名前を呼ぶわけにはいかないんだ…
「くぅぅっ!んんんっ!!んーーーーーー!!!」
頭を振って与えられる快楽を逃す。
「なぁ?何がお前をそこまで頑なにさせる?…俺が、そんなに…くそっ!!」
出し入れしていた手を止めて苦しげに絞り出す一の言葉に胸が痛む。
「くぁああっ!」
しかし、いきなりそれを抜かれて背中がのけぞり、声が出た。
それと一緒に少しだけ熱も吐き出せたが、そんなものでは到底追いつかず、体が熱くてたまらない。
「これも言ったら俺だもんな。お前が頑なに呼ばない俺のを型取ったやつ…だからいらねぇだろ?」
「あ…やだ…抜いたら…熱いの…助け…て…熱くて…なぁ…なぁってば!!」
涙が頬を伝い、必死に一に願う。
だが一はそんな俺の身体に手を置くと指を立てて爪の先でくるくるとなぞり出した。
「名前も呼べないくらいに嫌いな奴になんて抱かれたくないだろう?俺は優しーーーーーーからさ…無理はしたくないんだよ。まぁ、お前が俺の名前を呼んでくれるなら、いくらでもその熱を取ってやれるんだけどなぁ?」
「そんな…ズル…っ!」
ベッドにバンと手を打ち付けて俺を睨みつける一の激しさにゾクっと全身が震えた。
「ズルい?あぁ、ズルいよ?俺はいつだってお前を俺のものにするためにどんな手でも使ってきた。俺からお前を引き離そうとした親を俺はこの手で…」
ぎゅっとシーツを掴む手が震えている。
「ごめ…何?え?!何して…っ!!」
謝ろうとした俺の目の前で揺れる見慣れた物体。だがそれはいつものとは違い、完全に口を閉じさせて言葉を喋れなくすると分かる物。
あれを付けられたら、もう…!!
一の手が俺の口にそれを近付けてくる。俺は嫌がり必死に頭を振ってそれから逃げるが、一は俺の髪を掴んでその動きを無理やり止めると、俺に顔を近付けて囁いた。
「俺の名前を呼ばない口なんていらねぇんだよ…!!」
両手でその物体のベルトの端を掴んでぎゅっと口に押し当てられ、顔が動かせないままそれがカチャカチャという音と共に俺の口にガッチリとはまっていくのをその痛みと動かせなくなっていく口で感じる。
「んーーーーー!!んんんんーーーーーー!!」
嫌がる声も名前も音にしかならず、俺はそれでも必死に取ってくれと声を出した。
「んっんーーーー!んん、んっんーーーーー!!!」
「取らねぇよ。そうだな…俺の名前を呼びたくなったら取ってやる。じゃあな。」
そう言うと一はベッドから下りてスタスタと扉に向かって行った。
え?!このままで?熱も取ってくれないで、おもちゃも抜かれたままで…嘘だろ?!
身体を捩ってもいつの間にか足も開いた状態で拘束されていて、動かすことができない。太ももを擦り付けることも出来ず、おもちゃで中から快楽を得ることも出来ず、渦巻く熱に身体は我慢できず、一の背中に向かって必死で声を上げる。
「んんーーーーー!!んんんんーーーーーーっ!!」
俺の声を聞いた一が背中を向けたままで足を止めた。
「呼ぶ気になったか?」
「………。」
一の問いかけに答えられずに黙っている俺を見ることなく、一がノブに手をかけた。
「俺、本当に嫌われてるんだな…」
一の呟いた言葉が消える前に扉がバタンと閉まった。
「んっ!!んーーーーーーっ!!!」
扉の向こうに向かって声を上げてもなんの返事もない。
遠くでどかっと音が聞こえた。
一、嫌ってない!!
嫌ってなんかいない!
でも俺、今はまだ呼べないよ。俺が本当にお前と番になれる時まで…俺は…
落ちる涙が耳をくすぐる。そんな刺激だけでも俺の身体はビクッと反応した。
一、助けてよ!!
一、俺の熱を取ってよ!!
一ぃーーーーー!
「んんんーーーーーーっ!んんーーーーーー!」
どんなに声を上げてもそれに答えてくれろ者はなく、俺は熱に苛まれ続け、もがき苦しみながら、薬の切れるまで一人じっと耐え続けるしかなかった。
ともだちにシェアしよう!