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第105話
あの夢を見てから何度も子と別れ、夢の中の寒が言っていた通りになっていた。
「何で産まれないんだろう?」
一は俺の体と心を気遣ってくれているようで、子供の話は全くしない。子との別れに悲しみが一気に噴き出し、時々俺の起こす発作のような症状にもただ抱きしめて背中をさすり相槌だけを打ってくれて、俺を責めることは一切しなかった。
そんな一がぽそっと呟いた一言に俺は頭の中であの夢のことを思い出していた。
言うべきか…いや、俺のただの夢なんか…
そうやって悩んでいる俺を一が悲しんでいると勘違いしたらしく、焦ったように俺を慰めてきた。
「いいんだ。俺にはお前がいる。俺にはそれだけで十分だ。ただ、もし生まれる命でないならば、俺はお前への負担を無くしたい。できる限り命を作らない方法でお前を愛したい。」
一の言葉に今度は俺の方が焦った。
命を作らなくなったら、奇跡の起こる確率が減ってしまう。
「嫌だ!俺はお前との子供を産みたいんだ!あんな夢なんか嘘だ…あ…」
勢い余って口走った夢という言葉に一が反応する。
「夢?全、お前俺に何か隠してるのか?」
「ただの夢なんだ。俺が見たただの夢。だから、そんな怖い目で俺を見ないでよ…」
一の目がぎらっと光り、俺の拘束された腕をぎゅっと掴んでベッドに押し付けた。
「痛い!やめてよ!やめろって!!」
身を捩って一の手を離そうとする俺に、一の手が骨を握り潰すかのように力を入れた。
「くぅああっ!」
パキッという音と痛みに声が出る。
「言えよ。夢だろうが俺に隠し事をするな。言えっ!!」
一の怒号に痛みも忘れて体が跳ねる。
「本当に、ただの夢…なんだ。俺がお前との道を…選んだから、子は産まれて…来ないって…」
「何だそれ?いつの話だ?」
「夢は初めて肋を折られた日に見た。」
「待てよ。その言い方だとその前にも見てなきゃおかしいだろう?」
「ずっと、ずっと前に…沖に初めて会った日に見た。一か子供かを選べって…俺は一がいれば子供はいくらでも出来るって思って…それで一を選んだ。」
「愛してるから…じゃねぇのか?」
「その時は…まだそこまで自覚とかなかったし…」
「まぁ、いいや。俺を選んだ事には変わりねぇし。でも、何で子を産めないんだ?」
「これは夢だからな!その夢の中で会った男の言うには、一は奇跡的に命を授かり産まれたって。元々は俺だけが生まれるはずだったって。だから俺は一本の道をお前と二人で歩いているんだって。それで俺の手の二つのうちの一つは俺自身と繋がっているから一つしか掴めないって…よく分かんないけどそう言われた。」
「……。」
黙ったままでいる一に、あまりにも突拍子ないよな?と顔を背けながら言うと一が俺の胸に顔をうずめてきた。
「一?」
「いいじゃん!俺達はやっぱり運命だったって事だろう?お前を愛しすぎた俺が、何もかもを捻じ曲げて命を掴んでお前と共に産まれた。すっげーじゃん!」
「一…っ!!」
カリッと乳首を噛まれて腰が跳ねた。
「んっ!一…あっ!」
押さえつけていた手が下半身に伸びて足の間に入っていく。そのまま俺の中につぷっと音を立てて侵入すると、すでに一を受け入れるためにあふれ出している体液を掻き回すように動かし出した。
「ひっ!一…スるの?んっ…あっ…くぅっ…んん!」
「お前、たとえ夢だろうが産まれないのを知っていながら何で子を作り続けた?」
「それは…俺達が奇跡の双子なら…あぁっ!奇跡…を起こせる…って思っ…んぁあああっ!」
一が指を抜いて自分のを軽く扱き手を添えると俺に先端を当てた。
「そうだ!だったら作りまくって、奇跡を掴み取ってやる!!」
「一…ぁあああああああっ!!」
ぐぐっと一が俺の中に入り、まるで今までの思いをぶつけるかのように激しく腰を打ち付ける。
「絶対に産ませてやる!運命の何もかも作り変えて、奇跡ってやつを起こしてやる!」
「いちぃ…もっと…もっと奥ぅ!俺の奥に…一のちょうだ…っぃあああああああ!!!」
声が震えて我慢ができなくなっていく。あまりの快感に逃げようとする腰を掴まれて一が抉り突く。
「逃がさねぇ。産まれるまでお前の中に何度でもぶち込んでやる。いいか?俺達は奇跡の、運命の双子なんだ!奇跡を引きずり下ろしてやる!!」
いちぃ!!!!
声にならない絶叫を上げながら果て続ける俺に一は、俺の中に命のできるまで熱いモノを注ぎ込んだ。
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