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4.記念日(1)
「初めての学校はどうだった?」
ちょっと豪勢な晩ご飯のおかずを買った帰りの夜道。
俺は、ミオに初登校の感想を聞いてみた。
「んー、あんなにたくさんの人の前で自己紹介したの初めてだから、ちょっと緊張したかも」
「ははは、まぁ最初はそんなもんだよな」
「あとね、みんな最初はボクの事を女の子だと思ってたみたいなの」
「ああ、やっぱり?」
「うん。だからだと思うんだけど、クラスの女の子たちにいーっぱい話かけられちゃったんだ」
「そっか。じゃあモテモテだったんだな」
「モテモテ?」
「たくさんの女の子たちに好かれたんだねってことだよ」
「んー、そうなのかなぁ。いろいろ聞かれはしたけど、ほとんど答えられなかったし」
ミオが首をひねって考え込む。
「何を聞かれたの?」
「えーとね、何のマンガ雑誌が好きなの? とか。いろいろ名前を出されたけど、ボクひとつも分からなかったよ」
「それって、女の子が読むマンガ雑誌の事?」
「たぶんそうだと思う」
「じゃあ分からないよなぁ」
二歳のころに児童養護施設に引き取られたミオは、その施設の教育方針から、マンガ本に触れる機会が全く無かったのだ。
アニメですら、昨日見るのが初めてだったミオにとって、今の女の子たちが読むマンガのトレンドなんて分かるはずがない。
でも、そういう流行の話についていけないと、それはそれで友達と仲良くなるきっかけを失いかねないのである。
今度二人で一緒に買い物へ行く時に、人気がありそうなマンガ雑誌を何冊かチョイスして、ミオに読ませてあげようかな。
「で、男の子のクラスメートの子たちとも、仲よくやっていけそう?」
「うん、たぶん大丈夫。男の子たちもみんな優しくしてくれたし、休み時間にいっぱい遊んだりお話したりして、楽しかったよ」
「そうか……よかった」
俺はホッと胸をなでおろした。
今日の仕事中に俺が一番心配していたのは、ミオの女の子にも負けないルックスが男の子たちにからかわれたり、いじめの原因になったりしないかという事だったのだ。
だから、ミオが初めての学校生活を楽しんでこれたことは我が事のように嬉しかったし、同時に安堵 の気持ちで胸がいっぱいになったのだった。
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