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6.下着の多様性(3)

「他にはねー……」  と言ってミオは、タンスの引き出しをゴソゴソしだした。 「ミ、ミオ! 今日はもうこのへんにしとこうよ」 「えー? まだ一つしか見せてないのにぃ」  ミオがつまらなそうな顔をする。 「ほら、もうそろそろ学校に行く時間だろ」 「でもまだ七時だよ、お兄ちゃん」 「うっ」  俺は言葉に詰まった。  確かに、学校の始業まではあと一時間半近くあるから、そこは問題ない。  ただ、せっかく俺のことを信じて、好意で見せてくれているところを申し訳ないのだが、今の俺には刺激が強すぎるのである。  子供の下着を見続けてのぼせてしまったなんて、恥ずかしくて誰にも言えやしない。  ここはうまい理由を考えて、何とかミオに納得してもらおう。 「えーと、その、俺は今日ちょっと早めに仕事に行かないといけない日なんだよ」 「そうなの?」 「うん。だから、ショーツを見るのは次でもいいかな」 「じゃあしょうがないね……あ!」 「ん、どうした?」 「今日、お兄ちゃんのお仕事が終わったら、また見てくれる?」 「えっ」 「お家に帰ってきたら忙しくないでしょ?」 「そ、そうだね。ははは」  駄目だ、これ以上断る理由が見つからない。  ということで、俺はついに観念した。  結局この日は、夜遅くまで、十数枚あるミオのショーツ展示会に付き合わされてしまったのだった。  華やかで色とりどり、パンティーラインのエッジもさまざまのかわいいショーツを一枚ずつ見せてもらい、手に取って触るたびに、ミオがそれを穿いている様子を想像しては、ドキドキと高鳴る胸の鼓動を抑えるのに必死だった。  ただ、楽しそうに展示会を開いている時に見せてくれた、ミオのあの無邪気な笑顔。  俺は、ずっと忘れることはないと思う。  でも今後、ミオに新しいショーツを買い与える時は、一体どうすればいいんだろう。  ミオにも下着売り場について来てもらうのが一番だろうか。というかそうしないと、来客が俺一人ではロリコンの変態か何かだと勘違いされそうだ。  ――それから後日のこと。  俺は勤め先の会社で、事務員のおばさんである山田さんから、ランジェリーショップにネット通販なる便利なものがあるということを教えてもらい、くだんの下着選びについては事なきを得た。  かと思ったが、肝心の受取人の名義をバカ正直に俺の名前にしてしまっていたので、通販の担当者さんから、俺がロリコンの変態か何かだと勘違いされたかも知れない。やっちまった……。  さらに、通販で購入したショーツが梱包された箱は、あからさまに女性向けを意識した華やかなデザインだったので、配送業者の人から受け取る時には顔から火が出るような思いをしたのだった。 「あれ。どうしたの、お兄ちゃん?」 「何か大切なものを失ったような気がする……」

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