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7.テストの結果(3)
「正解はこれでーす!」
ミオが嬉しそうにお披露目した答案用紙の最上部には、赤ペンで九十八と書かれていた。
解答欄はどこを見てもマル、マル、マルのオンパレードだ。
「なっ、九十八点!? すごいなミオ」
「うふふ。ボク、算数は得意なんだよ」
なるほど、道理であんなに自信ありげだったのか。
児童養護施設から学校に編入したばかりで、途中から授業を受けることになって戸惑うこともあっただろうに、よくぞこんな高得点を取ってくれたものだ。
「よく頑張ったね。ご褒美ご褒美」
と言って俺はミオの頭をなでなでした。
ミオは恍惚 の表情で、子猫のような鳴き声をあげて喜ぶ。
「みゅーう……」
はぁ、ほっこりするなぁ。
このままずっと撫で続けてあげると、そのうち喉をゴロゴロと鳴らしそうだ。
こんなにかわいい子を捨て子にした、生みの親は一体何を考えていたのだろうか。
「でもね、ほんとは百点を取りたかったんだけど、ここだけサンカクになっちゃったの」
「ん? どれどれ」
俺はミオが指差した問題と解答に目をやったが、パッと見では何が悪いのか分からなかった。
実を言うと、俺はミオとは正反対で、算数だけは子供の頃から苦手分野なのである。
さらに、数学になってからのテストの成績は赤点スレスレを連発していたので、その苦手っぷりは筋金入りと言ってもいい。
数学担当の教師は「数学はパズルみたいで楽しい」と言っていたが、じゃあわざわざ分かりもしない数学なんてやらずに最初から娯楽のパズルで遊ぶっていう話なわけで、そんなありがたい説法は、俺には全く響かなかったのだ。
とにかくこの問題に関しては、解答自体は間違ってはいないものの、何かが惜しいという理由で、マルが貰えなかったんだという事だけは理解した。
「何でサンカクなんだろ? 俺には合ってるように見えるんだけど」
「えーとね、先生は『正しい公式とはちょっと違うからマルはあげられない』って言ってたよ」
「えぇ?」
その言葉を聞いて、俺は呆れてしまった。
「厳しい先生なんだなぁ、答えが合ってりゃそれでいいじゃないか」
「あはは」
と、ミオが遠慮がちに笑った。
テストの問題には他の正解がある場合や、解き方だって一つではない事もあるだろうに、先生によっては、自分の裁量で「これが正しい」と決めた公式や解答以外を、頑として正答とは認めないケースが存在するのである。
ミオの担任も、たぶんそういうタイプの先生だったのだろう。
俺の学生時代もそうだったからよく分かる。得てして学校教育は、こういう頭の固いところが今でもなお根付いているのだ。
決してやるつもりは無いが、これで先生の採点方法にクレームをつけたりすると、今度はこっちがモンスターペアレント扱いされるんだろうな。
厄介な世の中になったものである。
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