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8.初めての体育(1)

 ミオにとって、初めてだったテストの結果を見せてもらったその日の夜。  俺たちは、体を寄せ合って床についた。  これは何も今に始まった話ではないし、やらしい意味合いもない。二人が一緒のベッドで眠るようになってからは、いつもこうなのだ。  さみしがりやで甘えんぼうのミオは、毎晩、俺にくっついてひとしきり甘えきった後、日付が変わる前には満足した様子で眠りにつくのである。  時にはおねだりされるがまま、腕枕をしてあげたりもする。  児童養護施設に引き取られ、生みの親に捨てられた事を知って心を閉ざしつつあったミオに、俺なりに出来うる限りの愛情を注いでやれればと思って、二人が一緒の時は、好きなだけ甘えさせてあげることにしているのだった。 「ねぇお兄ちゃん、お話してもいい?」  俺の腕に抱かれたミオが、顔を上げて、ささやくように聞いてきた。 「ん、いいよ。何だい?」 「あのね。明日、学校で体育の授業があるの。その体育にボクも出ることになったんだけど……」 「ああ、注文してた体操服が届くまでは見学するって話だったよな。それがやっと届いたんだね」 「うん」 「体操服のサイズは合ってた?」 「大丈夫だよ」  そう答えるミオは、何だか気乗りしない様子だった。  それもそのはず。以前ミオ本人の口から、勉強は得意だが、運動に関してはからっきしだという話を聞いていたのだ。  なので、苦手な運動が主である体育に、この子はおそらく一抹の不安を抱いているのであろう。  俺の教育方針として、仮に悪い成績だったとしても絶対に叱ったりはせず、よいところを褒めて伸ばしてあげられるようにしようと決めている。  だから体育の成績が思わしくなくても、他の科目で頑張ってくれればそれでいいと思うのだが、ミオはやはり苦手な科目がある事自体を気にするようだ。 「で、明日は何をやるんだい?」 「先生は『ドッジボールをやります』って言ってたけど、どんな事をするのか分かんないの」 「ドッジボールかぁ」 「お兄ちゃん、知ってるの?」 「うん。俺がミオと同い年くらいの時にも、体育の授業でドッジボールやった事があるからね」 「そうなんだー」  ミオの表情が少し明るくなった。

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