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8.初めての体育(3)
俺が子供の頃はドッジボールを題材にした漫画やアニメが流行ったし、それらはドッジボールを球技というジャンルで、全国に広く認知させるには充分な影響力を持っていた。
だからこそ今日に至っても、体育の授業にドッジボールが取り入れられているのだろうが、やっている事は単純に言えば、先程説明したような「ボールのぶつけ合い」以外の何者でもない。
いかにマイルドな表現をしようと、球速と球威によっては、当たりどころが悪かったらケガをしかねない危険を孕んだスポーツなのである。
特に心配なのが、顔へボールが飛ぶことだ。
万が一ボールが高く浮いて、ミオの綺麗な顔に一生消えない傷がつこうものなら、俺はきっと授業に参加させたことを後悔するだろうし、何度謝っても償 いきれるものではない。
そういう取り返しがつかない事態になるくらいなら、いっそ安全圏でひっそりとやっていてくれた方がいいとも思うのである。
こういう考え方は、さすがに過保護だろうか。
だが何しろ、ミオは普通の男の子とは違う。
顔立ちや体つきも女の子寄りだし、穿いているショーツも……。
「あっ!」
「え!? ど、どうしたの? お兄ちゃん」
突然大声を上げたので、ミオがびっくりして身をすくめてしまった。
「ご、ごめんごめん。ちょっと気になる事があってさ」
「気になる事?」
「ミオ、体操服に着替える時は、みんな教室で着替えるのかな?」
「うん、男の子はそうだよ。女の子たちは他のお部屋に行ってお着替えするんだって」
「って事はミオも、他の男の子たちと一緒に着替えるんだよな……」
「そだね」
「じゃあ下着はショーツのままで、体操ズボンに穿き替えるの?」
「そうだけど……変かな?」
と返され、俺は答えに窮してしまった。
今となっては決して変だとは思わないが、ちょっと気がかりになった事があるのだ。
ミオは「かわいいから」という理由で、普段から女の子もののショーツを穿いている。
その総数はおよそ十数枚。
先日行われたミオ主催のショーツ展示会では、白地だけでなく、淡い水色や桃色のものだったり、動物のイラストがプリントされた柄ものの他、縞模様……いわゆる〝縞パン〟も持っている事が分かった。
いずれも布面積が小さく、パンティーラインもきわどいセクシーランジェリーばかりなので、それを穿いている姿を思い浮かべては、のぼせ上がりそうな程クラクラしたものだ。
で、明日ミオが体操ズボンに穿き替える際、クラスメートの男の子たち全員に、そのきわどいショーツ姿を見られる事になるというのである。これが心配せずにいられようか。
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