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13.憧れのウサちゃんパーク(6)

「ねぇお兄ちゃん、ウサちゃん抱っこしに行こ?」 「え? 俺はいいよ。ミオだけ行っといで」 「お兄ちゃんも一緒に行こうよー」 「でも……」 「おねがーい!」  と、ミオに抱きつかれて、おねだりされる。  ずるいなぁ、こんなの絶対断れないよ。 「わ、分かったよ。じゃあ一緒に行こっか」 「うん!」  こうして俺たちは柵の中に入り、各々、自分たちに懐いてきたウサギを抱っこする事になった。 「ウサちゃんかわいーい」  ミオが満面の笑みで、その腕に抱いた小さなロップイヤーのウサギに頬ずりをしている。  さっきのホーランドロップイヤーといい、うちの子猫ちゃんは、垂れ耳ウサギがお気に入りなのかな。 「ありがとねお兄ちゃん。ボク、ずっとウサちゃん触ってみたかったの」 「そっか……よかったな、ミオ」  初めは人混みの少ない場所ということで提案したウサちゃんパークだったが、喜んでもらえてよかった。 「ウサちゃん、すごくフカフカしてるぅー」  ミオは顔をほころばせながら、ロップイヤーのおでこをなでなでしている。  かたや俺の方では、毛並みが真っ白で目が赤い、日本固有種のウサギが膝の上で丸くなっていた。  このウサギ、初めは俺の周囲をくるくる跳ね回っていたのだが、その後、足元で鏡餅のように丸くなり、そのまま動かなくなってしまったのである。  どうやら俺の事を気に入ってくれたようなので、抱っこして膝の上に置き、現在に至る。  ウサギは警戒心が強く、臆病だというイメージを抱いていたが、ここまで人懐っこい動物だったとは。  もっとも、あえてそういう甘えんぼうな性格のウサギを集めて、このふれあいステージを作ったのかも知れないが。  まぁ何であれ、せっかくリラックスしてくれているんだし、そのフカフカな体を撫でてあげよう。  なでなで、なでなで。  うーん、それにしてもおとなしいな。背中を優しく撫でてみても、微動だにしないぞ。  これって喜んでくれているのかな?  猫みたいに喉をゴロゴロ鳴らしたりしないから、今ひとつ反応がつかめない。  ただ、ここを撫でられるのが嫌なら逃げていってしまうだろうから、たぶん心地はいいのだろう。 「お兄ちゃんのウサちゃんもかわいいねー」  と言うミオに懐いたロップイヤーも、閉じた太ももの上で、足を伸ばして横たわっている。  そこまで気を許してくれたって事は、この子たちはきっと、相思相愛なんだな。  そうだ、俺たちも記念に写真を撮らなくちゃ。  俺はウサギを乗せたまま、上着のポケットからスマートフォンを取り出し、ミオたちの微笑ましい姿を写した。  こうして収めた写真は、俺たち二人の大切な思い出として、アルバムに残す事にしている。  ついでと言っては失礼だが、俺に懐いてくれたウサギちゃんも、忘れないように撮っておこう。 「あ、お兄ちゃん!」 「ん?」 「ボクがお兄ちゃんとウサちゃんの写真撮るよー」  昔から写真写りがよくない俺は一旦断ろうかと思ったが、せっかくの申し出なのでお願いすることにした。  ミオはスマートフォンを受け取ると、慣れない手つきながらも、膝の上で目を閉じ、まんまるになっているウサギと俺をうまく写してくれた。  さすがに写真慣れしていない俺だ、どこかしら笑顔がぎこちなかったが、これもまたいい思い出かな。

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