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13.憧れのウサちゃんパーク(8)

「ほら、こっちにもエサあるぞー」  俺は小さくちぎったキャベツをさらに細かくして手のひらに乗せ、こちらの方に興味を向けようとする。  すると、ミオに群がってはいたものの、全くエサにありつけなかった小ウサギが、一羽だけやってきた。  その小ウサギはよほどお腹が空いていたのか、手のひらにあるキャベツを、もしゃもしゃと一心不乱に食べ始める。  きっとこの子は体が小さいから、背伸びをしておねだりしても、他のウサギとの競争に負けちゃうんだろうなぁ。  よしよし、今のうちにいっぱい食べな。  俺は小ウサギが食べやすいよう、ニンジンのスティックも短く折って分け与えた。  今まであんまり意識していなかったけど、ウサギが一生懸命エサを食べる姿って、すごく愛らしいよなぁ。  見ているだけで心がほっこりするというか、癒やされるような気がする。  さっきのふれあい広場といい、こういう体験をお手軽にやらせてもらえるから、ウサちゃんパークは女性や子供に人気なんだろうな。 「お兄ちゃーん。もうエサ無くなっちゃったよ」  空っぽになったカップを持ったミオは、次から次へとおねだりしてくるウサギに群がられていた。  全くミオに警戒心を抱いていないウサギたちにとって、空のカップに残っている野菜くずとその匂いが、食欲をかきたてているのだろう。 「じゃあ、俺の分を一緒にあげよっか」 「うん。ありがと」  俺のカップの中に残っていた野菜を二人で分け合い、その野菜を、匂いに惹かれて寄ってくるウサギたちに食べさせる。  さすがは元気なウサギばかりだ。二人分の生野菜を全部食べ終わるまで、ものの十分もかからなかった。 「ウサちゃんって、お野菜が大好きなんだねー」 「そうだなぁ。飼育員さんは『ニンジンはおやつ』って言ってたけど、まさかキャベツも食べるとは思わなかったよ」 「他には何を食べ……ひゃっ!?」  かがみ込んでいたミオが突然、何かに驚いた様子で立ち上がった。 「ん? どうした?」 「ウサちゃんにお尻をつつかれたぁー」 「ははは。たぶん、『もっとエサちょうだい』って言ってるんだろうね」 「もう。エッチなんだからぁ」  恥ずかしさからなのか、ミオは頬を紅く染め、ショートパンツの臀部をさすっている。  昔、鹿がいる某公園に行った時は、野生の鹿が〝鹿せんべい〟欲しさに、ふっ飛ばされそうな勢いで小突いてきたものだ。  あれのウサギ版だと思えば、微笑ましい光景ではあるよな。 「またつつかれないうちに出ちゃおっか」 「はーい。ウサちゃんまたねぇ」  俺たちは、エサを求めて追いかけてくるウサギをなだめつつ、ウサちゃん広場を後にした。

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