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13.憧れのウサちゃんパーク(9)
「ふぅ、よく遊んだな」
「そうだねー。ボク、少し疲れちゃった」
「じゃあちょっと早いけど、休憩がてら、ご飯を食べに行こうか?」
「うん! ご飯食べよー」
ウサギを眺め、次に触れ合い、そしてエサを与え、いろいろな体験をした俺たちも、そろそろ腹が減ってきた。
ということで、空腹を満たすべくやって来たのは、園内にあるレストランだ。
まだ正午を迎えていないのもあってか、多少は空席があり、そこそこ眺めのいい場所を取ることができた。
これが満席になっていたら、しばらく順番待ちをするハメになっていたところだ。早めに来てよかったな。
「ここ、何がおいしいんだろうな」
「うーん?」
メニュー表の写真とにらめっこしているミオの注文は、しばらくは決まらなさそうだ。
俺は店内を見回し、他の客が食べているものをチェックする。
あっちの親子連れはうどんか、まぁ定番だな。
ウサギの〝ウ〟の字だけ合ってる。
別にウサギにまつわる料理を注文しなければならない決まりは無いのだが、せっかくだから、メニューもウサギ尽くしであってくれれば、とは思うのである。
かといって、ウサギ料理を出されたら、それはそれで引くけれど。
向こうの若い女性二人組は……揃ってオムライスを食べている。
年頃の女の子たちって、同じ髪型にしたり、似たような服を着たりするらしいけど、それって要するに、仲間内からハブられないようにするための自己防衛本能が働いているのかな。
だとしたら、あのオムライスも自己防衛によるもの?
さすがにそれはないか、うまいものを食うために店に来ているのに、わざわざ他人に合わせて妥協するなんて事はしないよな。
……たぶん。
その辺の繊細な女心が分からないし、理解していないから、俺はモテないんだろうな。
あんまり店内をキョロキョロすると失礼になるし、変人だと思われそうだから、このくらいで止めておこう。
「お兄ちゃん。食べたいの決まったよー」
「おっ、そうか。何にするんだい?」
「えーとね。この和風ハンバーグ定食が食べたいの」
ミオがメニュー表をこちらに見せながら、料理の写真を指差す。
そこに写っているのは、鉄板で焼かれ、ポン酢と大根おろしをミックスした和風ソースがかけられている、こぶし大くらいのハンバーグだった。
「いいねぇ、おいしそうじゃん」
「でしょ? あと、ここ見てみて」
「ん?」
「ニンジンのとこ。ほら」
「……どれどれ」
さっきの写真をよく見てみると、ハンバーグの横に添えられている付け合わせのニンジンが、ウサギの顔を型取っていた。
「なるほど、こんなところにウサギ要素かぁ」
「かわいいでしょ?」
「うん。綺麗に型抜きしてあるね」
「だからこれにするー。お兄ちゃんは何を食べるの?」
「そうだなぁ」
俺は、ミオが拡げたメニュー表をパラパラとめくり、熟考する。
「よし、カツカレーに決めた。あと、飲み物はどうしよっか」
「ボク、オレンジジュースがいいな」
と、ミオは微塵 の迷いも見せずに即答した。
子供に人気のジュースは見た目で興味をそそられるから、やっぱり決断も早い。
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