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13.憧れのウサちゃんパーク(10)

 子供って、食事と一緒にジュースが並んでいても、割と平気なんだよな。  俺が小さい頃もそうだったから、気持ちはよく分かる。  でも、いつの間にか、食事のお供にはお茶か普通の水を飲むのが当たり前になっていた。  トーストやハムエッグなど、洋風の朝食やランチならまだジュースも有りだと思うが、和食にはさすがに合わない気がする。  これって俺がしつつあるって事なのかなぁ。  もしくは、社会人になって、そういうマナーだと叩き込まれたかのどちらかだろう。  ミオには、無理にしつけたり、考えを押し付けたりせず、好きなものを飲ませてあげたいな。  ちょっと甘やかしすぎかも知れないけど、せめて子供のうちは、伸び伸びとやらせてあげたいのだ。 「お。ここ、ニンジンジュースがあるじゃん」 「ウサちゃんが喜びそうなジュースだね」 「うん。たぶん、一生懸命になってちゅーちゅー飲むんだろうな」 「うふふっ」  その情景を思い浮かべたのか、ミオの顔から笑みがこぼれた。 「久しぶりに頼んでみるかぁ。すみませーん」 「はーい。お伺いしまーす」  俺たちはそれぞれ別のメニューを注文した後、ここ、ウサちゃんパークの話をしながら、料理が出来上がるのを待つ。 「エサやり体験までで三つは回ったけど、他には何があるのかな?」 「えっとね。ここに〝ウサギさん資料館〟っていうのがあるよ」  ミオがパンフレットに描かれた園内マップを指し示した。 「ほうほう、大きな見せ物としてはそれで最後か。後は〝ウサ散歩〟があるだけだな」 「ウサ散歩?」 「飼育員さんが建物の中で、ウサギを連れて散歩するイベントらしいけど、これは天気の悪い日限定だってさ」 「そうなんだ。見たかったなぁ」 「まあ仕方ないな。それより後でもう一回、世界のウサギさんを見に行くんだろ?」 「うん。行きたーい」 「じゃあしっかりご飯食べて、元気を蓄えないとね」  なんて話をしていると、ウエイトレスさんが、二人分の料理と飲み物を運んできた。 「ご注文は以上でよろしいでしょうか?」 「はい」 「かしこまりました。ごゆっくりどうぞー」 「さーて食うか……ん?」  ようやく飯にありつけるかと思ったら、目の前に熱々の和風ハンバーグ定食を置かれたミオが、愕然(がくぜん)とした表情で料理を見つめている。 「ミオ、どうしたの?」 「ニンジンが、ニンジンがウサちゃんの形じゃないのー」  鉄板の上でパチパチと音を立てている料理に目をやると、あろうことか、付け合わせのニンジンが普通の輪切りにされてしまっていた。  メニュー表の写真に偽りありだ。  察するに、最初のうちは気合を入れて型抜きしていたものの、次第に面倒くさくなってやめちゃったんだろうなぁ。  ミオが残念そうで気の毒だけど、ここはそういうレストランだと思って諦めるしかないな。  と思ったら、ミオがナイフとフォークを器用に使い、輪切りのニンジンをウサギの形にカットし始めた。  ちょっといびつな形だけど、なかなかいい出来だ。  こういう時は「食べ物で遊んじゃいけない」ってしつけるところなのかも知れないが、切った部分も残りも全部食べちゃった事だし、まぁいいでしょう。

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