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14.二人の歯科検診(6)

「柚月さん、こんにちは」 「あ、どうも。こんにちは」 「今日は、検診で来られたということですが」 「……はい」  もはや「違う」とは言える雰囲気ではない。 「今現在、どこか気になるところはありますか?」 「いえ、特に無いです」 「分かりました。それでは、これからお口の状態をチェックしていきますね」  椅子がリクライニングされ、俺は歯科用探針(しかようたんしん)というチクチクする針と、検診用の小さな鏡で、上下全ての歯と歯ぐきの状態をチェックされた。  先生はシーがゼロだとかマルだとか、八番がニ、七番がイチだとか、専門用語を使い、歯科助手さんに記録させていく。 「柚月さん。歯の方は(おおむ)ね問題ないです。すでに治療されている歯の状態も良好ですね」 「そうですか」 「はい。だけど、これ見てください。奥の方です」  と、先生は俺に手鏡を渡し、俺でも奥歯が見えるように合わせ鏡をしてくれた。 「一番奥の、がちょっと虫歯になりかけてるんですよ」 「えぇ!? そうなんですか?」  何てこった、歯磨きは毎日やっているから、虫歯なんて無縁だとばかり思っていたのに。 「まぁ、このくらいならまだ様子見で大丈夫です。斜めに生えているから難しいのはありますけど、歯磨きの方を頑張ってください」 「分かりました……」 「あと、歯石が若干付着しているので、取っちゃいましょう」  先生はそう言うと、歯科衛生士さんにバトンタッチし、他の患者のところへ行ってしまった。  その後は目にタオルをかけられ、歯石取りの機械で歯石をガリガリと削られたのだが、これが思ったより痛い。  歯科衛生士さんは、「痛かったら言ってくださいね」とは言ってくれたが、そんなの大の男が言えるわけないじゃんと思いながら、ただひたすら耐えたのだった。  歯石取りが終わったら、今度は歯の磨き方をレクチャーされ、歯間ブラシの他、糸ようじの手巻き版である、デンタルフロスの使用を勧められた。  歯間ブラシは欠かさず使っているが、それだけじゃ、歯垢の除去は不充分だということなのか。  また歯石取りで痛い目に遭いたくないし、帰りにドラッグストアに寄ってフロスを買うことにしよう。  予定外の検診と歯石取りを終えた俺は、待合室に戻り、ミオの隣に座った。  歯石を取ってもらったからか、何だか歯と歯の間が広く感じる。  そしてスースーするようになった。  本来なら、これが健全な状態なんだろうけど、今は違和感の方が強い。 「お兄ちゃん、大丈夫?」  ミオが俺の(ほう)けた顔を見上げて尋ねてくる。 「うん。歯の周りを綺麗にしてもらってきて、ちょっとスッキリしたような気がする」 「さっきチュイーンっていってたの聞こえたけど、お兄ちゃんが歯を綺麗にしてもらってた音?」 「そうだよ。歯ぐきの隙間とかに付いてた歯石を取ってもらったんだ」 「シセキ? 痛くなかった?」 「ちょっとだけね」  と、俺は強がりを言ってみた。

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