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18.初めての通知表(3)
通知表はもちろんだが、今時の小学校が、果たして子供たちに、どんな夏休みの宿題を課したのかも気になる。
俺が小学生だったころは、日記と自由研究の他、〝夏休みの友〟という名の、各教科の課題が載った冊子を渡され、それを期間中に埋め尽くしていたものだが。
あの時は友達にもいろんなタイプがいたなぁ。
日記以外の課題をさっさと済ませて、後は悠々自適 に夏休みを謳歌 する奴。
夏休みも終わりかけだというのに、日記もつけず、まだ課題も白紙のままで、最終日になって、ようやく焦り始めて涙目で課題をやる奴。
そんなだらしない奴のために、日記を書く際に必要な、夏休み全期間の天気を掲載した新聞もあったっけ。
他にも早朝のラジオ体操なんかも実施してたし、思い返してみれば、一口に夏休みと言っても、やる事はたくさんあったんだなぁ。
ミオにとっては、ほとんどが初めての経験になると思うんだが、果たしてうまく過ごしていけるのだろうか。
「ただいまー。帰ったよ、ミオ」
「お兄ちゃん! お帰りなさーい!」
奥の部屋から玄関まで小走りで迎えに来たミオが、買い物袋をぶら下げた俺の胸に勢いよく飛び込んでくる。
「今日はお昼で帰ってきたんだろ? さみしくなかったかい?」
「うん、大丈夫。お兄ちゃんが帰って来るまで、ウサちゃんと一緒にお昼寝したり、テレビを見たりしてたの」
ミオの言う〝ウサちゃん〟とは、先日行ったウサギオンリーの動物園で買った、おみやげのぬいぐるみの事だ。
「そっか。お昼ご飯はしっかり食べた?」
「食べたよー。お兄ちゃんの作ってくれたカレーライスおいしいから、いっぱい食べちゃった」
「ははは、そんなに気に入ってくれたんだ。じゃあまた今度、カレーを作ってみるかな」
「うん! 作って作ってー」
ミオはそう言って、ぴょんぴょんしながらおねだりする。
はぁ、やっぱりうちの子猫ちゃんはかわいいなぁ。
このいとしい子猫ちゃんのためにも、来週の旅行が楽しい思い出になるように、綿密にプランを練らなくちゃな。
いつものお迎えが終わった後、俺は部屋着に着替え、さっそく晩ご飯の準備を始める。
商店街にあるスーパーで買ってきた惣菜を電子レンジで温め、二人分の白飯をよそい、味噌汁を作って食卓に並べれば完成だ。
俺は料理が不得意だから、晩ご飯はいつも出来合いの惣菜とかインスタント食品、あるいは簡単なカレーばかりが並び、その度に申し訳ない気持ちになる。
でも、ミオは何一つ文句も言わず、いつもおいしい、おいしいと言って食べてくれるのだ。
その優しさに俺は心を打たれ、ミオの事をますますいとおしく思うのである。
普段の食生活が質素になっているだけに、たまには豪勢な食事をさせてやりたいのだが、これまでは、なかなかその機会が無かった。
そしてようやく訪れたチャンスが、来週のリゾートホテルへの宿泊だ。
パンフレットによる料理の紹介を見るに、あの高級ホテルなら、きっとミオにもたくさんのごちそうを食べさせてあげられることだろう。
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