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18.初めての通知表(4)

 少し遅めの晩ご飯を食べ終え、丁度洗い物を済ませたころ。  ミオが一旦自分の部屋に戻り、一学期の通知表を持って俺のところへやって来た。 「お兄ちゃん。先生から、通知表もらってきたよ」 「おー。じゃあ見てもいいかい?」 「うん。見て見てー」  ミオは特に嫌がる様子もなく、すんなりと通知表を渡してくれた。  俺たちはリビングのソファーで隣り合わせに座り、保護者への報告書も兼ねた通知表を開く。  これによると、どうやらミオが通う小学校は、各教科の成績を五段階で評価するようだ。  各教科の成績欄には、一本の縦線に対して、上から下まで、五本の横線が均等に引かれている。  その横線の上に丸印をつける事で、一から五までの、どの成績だったかを示すシステムになっているのである。  例えばミオが最も得意としている算数だが、これには一番上の横線に丸印がしてあるため、最高の成績である〝五〟だという事が分かる。  逆に、運動が苦手だと言っていた体育では、可もなく不可もないという意味合いなのか、三番目の横線に丸が打たれており、これで〝三〟という評価になるのだ。  さて、気になる他の教科も見てみよう。  国語は四か、なかなか高いな。  聞く能力、話す能力、そして漢字の読みや書き取りなどが高評価になっている。  同僚の佐藤が苦手だと漏らしていた理科だが、ミオは最高の五を取っていた。  この子は理数系が得意なのかな?  お次の社会は少し低めの三とあるが、これは仕方のない結果かも知れない。  俺がミオを迎え入れるまでは、この子は児童養護施設での箱入り娘ならぬ、〝箱入りショタっ娘〟な生活が続いていた。  学校に途中編入した時は、インフラ整備や生活に必要な各種ライフラインの施設を見学する機会をすでに逸していたのだ。  そのため、見学に対する感想文や小テストなどは実施できなかったし、各種ライフラインの仕組みも覚えきれていないという点で、こういう評価になったのだろう。  ここまで見た感じ、体育と社会以外はおおむね好成績じゃないか、大したもんだ。 「ミオ、算数と理科が一番いい成績じゃん。よく頑張ったね」 「えへへ、ありがと」 「毎日、家で勉強と宿題をしっかりやってたの、俺も見てたからな。ずっと信じてたよ」 「ほんと? 嬉しいな」 「ほんとさ。だから頑張ったミオには、ご褒美のなでなでをプレゼントしちゃうよー」  と言って、俺は横に座るミオの頭をいっぱいなでなでした。 「んー、お兄ちゃんのなでなで大好きぃ……」  ご褒美をもらったミオは、幸せそうな顔で俺の腕にすがりつき、何度も頬ずりして甘えてくる。  いつも思うが、この子のしぐさや甘え方はまさしく子猫そのもので、とても愛らしい。  ミオ本人の話によると、四年前に出逢ったあの時、俺になでなでされた事で、初めて人を好きになったのだという。  つまり、この子にとって俺になでなでされる事は、最高のご褒美で、かつ、一番嬉しい愛情の注がれ方という認識なのである。  だからここまでメロメロになっているのだ。

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