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20.二人の名所めぐり(5)

「見て見てお兄ちゃん、大吉って書いてあるよー」 「おー、やったじゃん」  って、喜んでいいのかな?  それはつまり、俺とミオの縁結びが万事うまくいくでしょう、っていう御神託なのではないのか。 「何が書いてあるんだい?」 「んーとね。愛情運のところに、何だかいっぱい書いてあるよ」  ミオに見せてもらった恋みくじの一番上、愛情運の欄には、次のような事が書いてあった。 「片思いだった貴方の恋は成就するでしょう 自分の心の内を偽らず素直に伝えれば 想い人とは必ず結ばれます 浮気は(つつし)むことです」  愛情運の欄は、すなわち神様のお告げ。  という事は、やっぱり俺とミオの恋は成就するのか?  でもこのお告げって、男同士というか、同性同士の恋愛でも有効なのかなぁ。 「お兄ちゃん、ここ何て読むの?」 「ん、これかい? 〝うわき〟って読むんだよ」 「うわきってなーに?」 「そうだなぁ。平たく言うと、すでに恋人がいるのに、他の人とも付き合っちゃうって事だね」 「えー。そんなひどいことするの?」 「まぁ、世の中にはいるんだよ。自分がモテているのを鼻にかけて、他の子にちょっかいを出そうという奴がね」 「ふーん。でもお兄ちゃんなら浮気はしないよね?」 「え? そうだな、絶対にしないと言ってもいいかな」  そもそも、俺には浮気をする相手どころか、彼女すらいないし。 「ねぇねぇ。血液型のところ、恋人にするならA型の人にしなさいって書いてあるよ。お兄ちゃんは何型?」 「俺はA型だけど……」 「やった!」  ミオが喜びのあまり、ぴょんと飛び跳ねた。 「ボクはO型だから、A型の人とは相性がピッタリなんだって。よかったぁ」 「そういや、ミオはO型だったね」 「うん。だからボク、お兄ちゃんの恋人になるー」  と宣言したミオは、俺の腕を抱いてすりすりと頬を寄せる。  ショタっ娘の恋人かぁ、悪くないって言うか、な俺にはむしろありがたい話だ。  ただ、すごく微笑ましいところに水を差すのも何だから黙ってたけど、血液型で縁結びの相性診断ができる神様って、統計学でもやってたのかな。 「お兄ちゃんのおみくじはどうだったの?」 「俺はねぇ、えっと、〝末小吉(すえしょうきち)〟って書いてあるね」 「んー? どういう意味?」 「俺にも分からん……ちょっと調べてみるよ」  末小吉の意味を調べるべく、俺はハーフパンツの尻ポケットからスマートフォンを取り出し、ネットで検索する。 「どうやら、末小吉は〝凶〟みたいな悪い運勢の一つ手前らしいね。つまりギリギリセーフだって事かな?」 「えぇぇ」  あまりにも微妙な結果だと知らされて、ミオが気まずそうな顔をする。 「あ。でも、凶の一つ手前なら、悪くはないんだよね?」 「まぁ一応、吉とはついてるから、そんなに悪い事はないと思うんだけど」 「じゃあ、きっといい事あるよー」  ミオの健気なフォローが心に()みる。  というか、このそんなに大きくない神社の百円おみくじで、そこまで細やかに運勢を分けてある事実に驚きだよ。  書いてある内容も何だか微妙なものばかりだけど、こんなレアなおみくじを引けたのは、ある意味強運なのかも知れない。  末小吉に関してはそう解釈する事にして、運気が上がりますようにというお願いも込めて、木の枝に結びつけておこう。  大吉を引いたミオはおみくじを大事に取っておくらしく、さらに恋愛成就のお守りも授与してもらい、これが佐貴沖島(さきのおきしま)での初めてのおみやげになった。

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