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20.二人の名所めぐり(6)
「神様、お願いを聞いてくれるといいねー」
「うん、そうだね。でも結婚はまだ先なんだからな」
「むー。いいもん、来年まで待つもん」
そういや俺と結婚するのは、来年のミオの誕生日って決めてたんだっけな、ミオが。
この子はここまで俺の事を慕ってくれてるんだし、その時は腹をくくるしかないかもなぁ。
もともと、恋愛が自由なものだって言ったのは俺だし、ミオに対して、日々、恋愛感情のようなものを抱きつつあるのも事実だ。
この気持ちに嘘をつかず、ありのままで付き合っていけば、きっと来年には結ばれているんだろう。
法律がそれを許すかどうかはともかく。
「じゃ、今度はすぐそこの繁華街に行ってみようか」
「うん。行こ!」
俺たちは石段を下り、くぐってきた鳥居に頭を下げ、縁結びの神様をお祀りしている佐貴島神社を後にした。
神社と繁華街への入り口はほぼ隣接しているので、いっぺんに二ヶ所の観光地を訪れる事ができるのはありがたい。
この繁華街は佐貴島横丁というらしく、道幅は広いが〝原則として〟歩行者専用道路なため、車はおろか、自転車の進入すら厳禁となっている。
で、そんな道の両サイドには各種みやげ物の店や食堂、カフェにスイーツショップなどがズラーッと並んでおり、非常に目移りがしやすいのだ。
「お店がたくさんあるねー」
「そうだなぁ。こんなに賑やかな場所に来たのは修学旅行以来だよ」
普段は人混みを苦手な性格なため、混み合う場所をことごとく避けてきた俺たちだが、この観光地ならではのエネルギッシュな賑わいは、あまり嫌ではない。
俺の隣で腕を組んでいるミオも、横丁に立ち並ぶ店の数々を、興味深く眺めている。
ただ、行列ができるほど人気な店には抵抗があるようで、そっちの方へはあまり行きたがらなかった。
まぁ俺でも、あれはそういう反応になるな。
いかに話題性があって、おいしい料理を出して、リピーターが多い評判の店だとしても、並んでまで食べたいとは思わない。
俺が天の邪鬼なのかも知れないが、そういう店は、なぜか一歩引いた目線で見てしまうのだ。
なので、観光客が溢れんばかりに押しかけている店はスルーして、俺たちは比較的空いている、かぼすスイーツ専門のカフェに寄る事にした。
何でもここでは、佐貴沖島 特産のかぼすを使ったパフェが一番の目玉商品なのだそうだ。
パフェかぁ、そういや少年時代以来食べた記憶がないな。
俺は甘党だからパフェ自体は大好きなんだけど、大の男が一人で女の子でいっぱいのスイーツ店に寄る、なんて事がまず気恥ずかしくてできなかった。
だから、こういうお店に立ち寄り、パフェを食べられるのは、家族か彼女がいる男だけの特権だろうと思うのである。
俺が人目を気にしすぎているだけかも知れないが、そういう意味では、子供かつ、俺の恋人に立候補してくれたショタっ娘のミオがいてくれて助かった。
さて、それじゃあお店イチ押しのパフェを頼もうかな?
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