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20.二人の名所めぐり(11)
「はぁ。何だか、じわじわと疲れが取れる感じがするな」
「体がポカポカしてくるねー」
「うん。体の芯から温まってる感じだね」
熱すぎず、ぬるすぎずの適温でかけ流しされる足湯があまりにも心地よすぎて、ずっと浸かっていると、うっかり寝てしまいそうだ。
ミオも少しうとうとしているのか、目を閉じて、俺の方にもたれかかってきた。
「ミオ、眠い?」
「んーん。すごく気持ちいいだけ……」
気持ちいい足湯に浸かりながら、自分の大好きな人に体を預けるのって、ミオにとっては至福のひとときなんだろうな。
こうしていると、俺たちは年の離れた恋人に見えたりしないかな?
さすがにそれは無いかなぁ、ミオが小さすぎて、せいぜい叔父さんと姪っ子みたいな関係が関の山か。
ミオは男の子だけど。
しかしこのふれあいの里、休憩所にはしっかりと食堂が作られているし、みやげ物が買える売店の品揃えも充実している。
目玉は何も足湯だけじゃなく、本格的な温泉施設で疲れを癒やすこともできるようだ。
どっちかと言うと、健康ランドに近いコンセプトで建てられたのかな。
だとしたら、観光客や車中泊の人以外にも、お手軽に温泉に浸かれるという事で、地元住民も利用しに来ているのかも知れない。
「お兄ちゃーん」
「ん? どうしたの?」
「このままじゃボク寝ちゃいそうだから、そろそろ出よ?」
「はは、そっか。やっぱり眠かったんだね」
まぁ、こんなに気持ちのいい足湯にしばらく浸かっていたら、眠たくなるのも無理もない話だ。
今日は朝早く起きて、この島までやって来るまでに数回乗り換えをした移動疲れもあるだろうし、昼間の炎天下の中、徒歩で観光地めぐりをした疲れも出てくるころなんだろう。
「じゃあ、今日はもう魚釣りはやめとく?」
「あ、そうだ! 魚釣りするってお話だったんだよね」
ついさっきまでおねむだったミオが、魚釣りというフレーズを聞いた途端、活力を取り戻したかのようにシャキッと目を覚ました。
「お兄ちゃん、今からお魚釣りに行こ?」
「いいけど、大丈夫? 疲れてないかい?」
「うん。足湯のおかげで元気いっぱいになったよー」
さすがは子供だなぁ、若々しくて気力に満ち溢れているというか。
俺もまだ二十七歳だし、負けていられないな。
俺たちが泊まるホテルの敷地内にはプライベートビーチがあり、そのビーチの近くにある堤防では釣り台が建設されているため、夜間まで魚釣りを楽しめる。
この堤防釣りも立派なアクティビティの一つであり、俺たちにとっては、これが初めてのリゾート施設の利用という事になる。
俺たちは足湯で温まった足をタオルで念入りに拭いた後、まずはみやげ物が詰まった袋を客室に置くため、ホテルへの帰途についた。
ちょうど夕まずめに差し掛かるいい時間帯だし、今から堤防に向かえば、きっと期待通りの釣果になる事だろう。
この時期の堤防釣りで釣れるアジやサッパなどは、果たしてどんな大きさになるのかなぁ。
できれば良型かつおいしい魚が釣れて、ミオが喜んでくれるような結果になるといいな。
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