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22.初めてのディナーバイキング(2)

「お兄ちゃん、これ全部食べていいの?」 「うん。バイキングだから、自分が欲しいだけ取って食べていいんだよ」 「そうなんだ。でも、何でバイキングって名前なの?」 「何だったかなぁ。確か、こういう食べ放題を始めたお店の名前がバイキングだったとか、そういう由来だったような気がする」 「へぇー。お兄ちゃん、やっぱり物知りだねー」 「んな事ないよ、俺もテレビとかネットで見た情報の受け売りしてるだけだから」  バイキングは、時折、ビュッフェスタイルとも呼ばれる。  が、あっちは本来、立食の意味合いで使われるため、このホテルのように席に座ってくつろぎながら食べる場合は、やはりバイキングで正しいのだろう。  俺たちはバイキング用のプレートを持ち、一番近くにある和食コーナーへと移動する。  ここでは、島の経済を支える漁業にて獲れた魚をさまざまな調理法で提供していて、アジフライにエビフライのような、子供が喜びそうなメニューから、果てはアナゴの蒲焼きや、ウニの軍艦巻きまである。  まいったなぁ、と言ってもこれは嬉しい悲鳴だけど。  和食コーナーの一部分、海鮮シリーズだけでこんなにも豪華なのか。  ミオもたくさんの品揃えに驚き戸惑い、どれを取ればいいのか迷っている様子だ。 「ねぇお兄ちゃん。これなーに?」 「ん?」  ミオが不思議そうな目で見ていた海鮮料理は、大きな貝殻の上に、とろけたクリーミーなチーズが乗っかった焼き料理だった。 「それはね、ホタテのオーブン焼きだよ」 「ホタテ?」 「そう。ホタテ貝っていう貝類で、身がプリプリしてておいしいよ」  オーブンを使って、かつチーズを乗せているから、厳密には和食じゃないんだろうけど、日本で獲れた海の幸という意味では、やっぱり和食なのだろうか。  というかこんなにたくさんのホタテ料理を、バイキングで振る舞って大丈夫なのかな?  って、さっきから俺は、ホテルの経営や採算の心配ばっかりしているな。 「ボク、これ食べてみるー」  ミオはホタテのオーブン焼きを一つプレートに乗せ、そこから(せき)を切ったように、大好きなアジのフライも調達していく。  俺もせっかくだから、このウニの軍艦巻きを二貫と、カツオのも数切れいただいちゃおうかな。  今の時期のカツオは特に旬ではないそうだが、この時期は島のカツオ漁が盛んになり、たくさん水揚げされるため、比較的安値で取引されるのだという。  そうやって安く仕入れているから、こんなに山盛りで提供されてるんだろうな。  それにしてもうまそうだなぁ、焼き目のついた身はよく締まっているし、備え付けてある特製ダレの香りがまた食欲をそそる。  薬味として、すりおろした生姜をたっぷり乗せれば、夏バテ防止にもよさそうだ。  他にも海鮮料理はたくさんあるのだが、さすがにここだけで終わったらもったいない。  なので今度は、肉と野菜の料理コーナーも覗いてみる事にしよう。

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