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22.初めてのディナーバイキング(3)

 野菜もこの島で栽培されているものばかりで、通年収穫できるものや、いわゆる夏野菜を使った料理もある。  中でも目を引くのがかぼちゃの天ぷらで、かぼちゃは野菜なのに甘くてうまいし、栄養も豊富だから個人的には大好きだ。  仕事帰りで晩ご飯のおかずを確保するべくスーパーへ行く時も、惣菜としてかぼちゃの天ぷらを買い、ミオにも食べさせてきた。  それを繰り返すうちに、ミオの好みも俺に似てきたのか、惣菜のかぼちゃが食卓に並ぶと大喜びするのである。  という事なので、俺とミオは二人揃ってかぼちゃの天ぷらと、その他数品をプレートの片隅に添えた。  かたや肉の方だが、他の宿泊客に人気が高いのは地鶏を使った焼き鳥や、このコーナーで一番の目玉である、佐貴島牛のステーキと〝しぐれ煮〟のようだ。  特に、鍋いっぱいに盛られたしぐれ煮は、島で育てたゴボウと一緒に甘辛く煮込んであるので、ご飯が進むこと請け合いである。 「お肉がいっぱいだねー」 「うん。どれも脂が乗っててうまそうだ」 「ボク、焼き鳥を食べよっかなぁ」 「いいねぇ、タレと塩から選べるのか」 「んーと、このモモとって言うの? 後はねぎまにするー」  ミオはあまり牛肉に興味を示さなかったのか、焼き鳥だけを取って先に進んでいった。  んじゃあ俺は、せっかくなのでしぐれ煮を盛り付けて、後で白飯に乗っけていただくとするか。  和食コーナー最後は炊きたての白ご飯が詰まった特大の炊飯器と、わかめは別入れにする味噌汁の鍋が並んでいた。  各々で適量のご飯をよそい、味噌汁を()ぎ、プレートがひっくり返らないよう注意しながら容器を乗せる。  ついでに、小皿にいくつかの漬物を乗せ、これで一周目のご飯は完成だ。 「いただきまーす」  ミオがまず箸をつけたのはかぼちゃの天ぷらで、揚げたてで衣がしっかりしているからか、咀嚼するたびにサクサクと心地いい音が聞こえる。 「かぼちゃ、甘くておいしいねー」  幸せそうにかぼちゃを頬張るその顔を見て、まるで自分の事のように嬉しくなった。  やっぱりかぼちゃに外れはない。その果肉はもちろんの事、何なら種だって、オリーブオイルで炒ってしまえばおいしく食べられるのだから。  俺もまずは大好きなかぼちゃからいただき、次に、シソの葉やナスのの天ぷらも食す。  ナスの食感というか、このキュッキュッと音を立てる歯応えがまたいい。  ナスは基本的に水っぽく、味らしい味がついていないので、天つゆをつければその味になるし、味噌田楽にすれば、そのまま甘辛い味噌の味で楽しめる。  こんなにうまいのに、俺のお袋は謎の理由でナスが食えないってんだから、もったいないよなぁ。  ミオは野菜に関しては好き嫌いが無いので、ナスはもちろん、一緒に持ってきたオクラの天ぷらも喜んで食べていた。

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