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24.初めての海水浴(1)
高級リゾートホテルの宿泊二日目となる今日は、ミオよりも先に俺が目を覚ました。
ミオはよほど疲れていたのか、昨日はいつもより早めに寝付き、今もなお、俺の横でスヤスヤと寝息を立てている。
広い客室にはベッドは二つ用意されていたのだが、ミオのたっての希望もあって、ホテルでも、家にいる時のごとく一緒に寝ることにしたのだった。
余ったもう一つのベッドには、ミオが後生大事にしている、ロップイヤーなウサちゃんのぬいぐるみが置かれている。
気になっていた天気の方だが、レースのカーテン越しに差し込む朝日を見る限り、どうやら雨は未明には止んだようだ。
いやぁよかった。何しろ、プライベートビーチでの海遊びは今日が本番なのだから、そんな大事な日に雨天だと非常に困る。
実はミオが寝た後、こっそりとスマートフォンで雨雲の動きをチェックしていたので、こうなるだろうなという安心感は一応あった。
だからこそ、俺もぐっすりと眠れたわけだし。
ぐっすり寝たのはいいとして、今は何時なんだろう。
旅の疲れもあるだろうから、ミオにはゆっくりと寝てもらいたいと思い、ホテルサービスのモーニングコールは頼んでいなかった。
昨日の作戦会議で、今日の朝ご飯を食べに行く時間も、いつもより遅くしようと決めていたのだ。
俺は枕の横に置いていたスマートフォンを手に取り、現在時刻を確認する。
何だ、まだ七時ちょっと過ぎじゃないか。
普段、家にいる時よりはおよそ一時間遅く起きたものの、それでもまだ七時だ。
このホテルによる朝食バイキングの営業時間は確か午前九時までだったから、だいぶ余裕がある。
もうしばらくすればミオも起きてくるだろうから、それまでは、ベランダでのんびりと海でも眺めておくか。
しかしいいとこにホテルを建てたよなぁ、砂浜に打ち寄せるさざ波の音が耳に心地よくて、目を閉じていると二度寝しちゃいそうだ。
せっかくだから、この美しいセルリアンブルーの海の写真を撮っておいて、佐藤へのみやげにでもしてやるか。
俺がベランダの手すりから少し身を乗り出し、拡大モードで大海原 を撮影していると、背後で窓の開く音が聞こえてきた。
「ふぁ……お兄ちゃん、おはよう」
「おはよう、ミオ。よく眠れたかい?」
「うん。お兄ちゃん何してるの?」
「今、海の写真を撮ってたんだよ。ミオもおいでよ、すごく綺麗だぞ」
「ちょっと待っててぇ」
ミオは寝ぼけまなこをこすりながら、ベランダに置いてあるサンダルを履き、俺の横に並んだ。
「わぁ。青くて綺麗だねー」
「だろ? こういう美しい景色をさ、記念に残しておかないともったいないかなって思ってね」
「ボクたち、今日はこの海で遊ぶんだよね?」
「そうだよ。きっと楽しい一日になるぞ」
「ワクワクするなぁ。雨が止んでよかったね」
ミオもベランダに来た事だし、いい機会なので、穏やかなブルーの海を背景に、二人並んで記念写真を撮った。
ちょっと難しい自撮りになったけど、これもまた、二人の中でいい思い出として永遠に残ることだろう。
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