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24.初めての海水浴(3)
「お昼ご飯を食べる前に、先に海で泳いじゃうのはどう?」
「なるほど。それならいっぱい遊んだ後でお腹が空くから、お昼ご飯もおいしく食べられるね」
「うんうん。あっ、そしたらペダルボートとグラスボートも、先の方がいいのかな?」
「その二つはご飯の後でもいいんじゃないか? 何しろ海に浸からない遊びだし、軽い運動だけで楽しめるからね」
「そっかー。じゃあ予定は決まりだねっ」
「よし。それじゃ少しお腹を落ち着けたら、さっそく泳ぎに行こう」
「うん! ボク、今のうちに浮き輪を膨らましておくね」
ミオは自分のリュックサックから、ぺったんこになった浮き輪を取り出し、口を使って、ふうふうと空気を吹き込む。
ちなみにこの浮き輪は俺がチョイスしたもので、ミオが好きな女の子向けアニメのキャラが描かれているのだ。
普通の男の子にはバトル漫画のアニメ化モノとか戦隊モノなんかが受けるんだろうが、なにぶんにもミオは花も恥じらうめんこいショタっ娘なので、この浮き輪を使っても、何ら違和感は与えないはずだと踏んだのである。
俺もバスタオルやフェイスタオル、そして水着の上に羽織る、シャツとハーフパンツなど二人分の衣服を、防水用バッグに詰めていく。
プライベートビーチで泳ぐ時は、このバッグは砂浜に置いておくから防水である必要はないのだけれど、念には念を入れておいた。
ひとしきり海で泳いで遊んだ後にシャワーを浴び、タオルで水気を吸収してからシャツとハーフパンツを穿き、そのまま昼ご飯を食べに行く、という予定をきっちり遂行するためである。
「お兄ちゃん、見て見てー。浮き輪が膨らんだよ」
「お。かわいいじゃん。ミオにピッタリだね」
「ほんと? えへへ、よかったぁ」
かわいいものが大好きなミオには、かわいい絵柄のグッズがよく似合う。
ミオはある程度は泳げるらしいが、やはり海はプールとはいろいろ訳が違うので、いざという時のために、溺れる心配の無い浮き輪を装着させる事にしたのだった。
プライベートビーチへ出かける前に、俺たちはあらかじめ日焼け止めを塗り、海水パンツを穿き、その上に衣服を着用する。
現地に着いたら衣服を脱いで水着姿になり、脱いだ衣服をバッグにしまい込んでから、思いっきり遊ぶ予定だ。
脱いだ衣服や荷物類を入れたバッグは、ビーチの手前にある簡易ロッカーに預ける事ができるので、まず窃盗の心配はいらないだろう。
というかそもそも、このホテルのプライベートビーチは厳重なセキュリティが売りで、常に複数の監視員やライフセーバーが目を光らせているため、適当に荷物を置いていても、まず盗まれはしないと思われる。
「えーと、今が八時半くらいかぁ。ミオ、九時になったら海に行こうか?」
「うん、そうだね。泳ぐの楽しみだなー」
ミオは人生初の海遊びが待ち遠しくて、ワクワクが抑えられないといった様子だ。
朝食バイキングで満たしたお腹を落ち着けた後は、それぞれ荷物の入ったバッグと浮き輪を持ち、ホテルを出てすぐそこのプライベートビーチへと向かった。
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