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24.初めての海水浴(4)
「すごーい! 海が透き通ってて綺麗だねー」
俺たちがやって来たプライベートビーチの海は、見渡す限り青々としているだけでなく、透明感があるおかげか、底にたまった砂までもが透けて見える。
「砂浜もしっかり整備されてるから、ゴミ一つ落ちてないね。さすがは名門ホテルって感じの管理体制だな」
「ね、お兄ちゃん。さっそく泳ごうよー」
「そうだな。あ、でも、泳ぐ前に準備運動をしておかなくちゃね」
いきなり何の準備もなく海に入ると、急激に体に負担がかかるため、足がつってしまったりして、溺れる原因に繋がりかねない。
なので適度に体を動かし、あらゆる筋肉をほぐしておく事が大事になるのである。
俺はストレッチで上半身や太もも、ふくらはぎなどを念入りに伸ばし、ミオは水泳の授業で教わった準備体操で体を動かしていく。
一通りやって体がほぐれたら、今度は体を海の水温に慣らすため、片足ずつ、じわじわと海水に浸けていった。
「ひゃぁー。冷たくて気持ちいいねー」
「うん。今日もいい天気だから、海も熱くなるかなって思ってたんだけど、割とひんやりしてるもんなんだな」
実は俺も、海に入るのはこれがおよそ十五年ぶりになるから、子供の時に覚えていた海の性質は、すっかり忘れてしまっていたのだ。
かたや体の小さいミオは、少し深いところに進んだだけで、もう足が届かなくなりそうな状態になり、浮き輪の力のおかげでプカプカと浮かぶのを楽しんでいる。
両手を浮き輪の前に突き出し、バタ足で俺がいる方へ泳いでくるミオのその姿がとてもかわいくて、見ていてほのぼのとした気分になった。
「ミオー、こっちだよ。おいでおいで」
「お兄ちゃーん、そこで待っててぇ」
一生懸命泳ぐミオを、俺は両腕を伸ばして待ち受ける。
バシャバシャと音を立てながらバタ足を駆使して泳ぎ、前に進み、ようやくミオは俺の手につかまった。
「どう? ボク泳げたでしょ?」
「うん、すごく上手だったよ。じゃあ今度は、もう少し長い距離を泳いでみようか」
「長い距離って、どのくらい?」
「俺の手を持ったままでいいから、少し深くなってるとこまで行ってみよう」
「分かった! 頑張るよー」
深いところと言っても、水平に上げた俺の両腕が浸からないくらいのところなのだが、ミオにとってはまだ未知の領域だ。
ミオは俺の両手を、恋人繋ぎのような感じで握り、少しずつ後ろ歩きしていく俺に置いていかれないよう、再びバタ足で泳ぎ始める。
「ミオ、怖くない?」
「大丈夫だよー。お兄ちゃんが手を繋いでくれてるから怖くないの」
遊泳している他の客にぶつからないよう注意を払いながら、ミオをちょっとだけ深いところまで連れて行った。
「結構泳いだね。ほら、見てごらん。砂浜があんなに遠くなっちゃったよ」
「ほんとだー」
ミオは俺の手につかまったまま後ろを振り返り、自分が泳いできた距離を実感する。
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