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26.夏のマリンアクティビティ(2)
足から着水するならまだしも、あの三、四メートルの高さから落下して、頭や腹から突っ込むような事になったら、最悪ケガをするかも知れない。
そのケガや溺れたりする事故を防ぐための完全防備に加え、フライボードの実践前には、練習とレクチャーの時間を充分に確保するのだそうだ。
ちなみに、ここでのフライボードを体験できる対象は中学生以上との事。よって、まだ十歳のミオは残念ながら挑戦できない。
もっとも、ミオ自身がフライボードにあまり興味を示していない様子なので、言うほど残念ではないのかも知れないが。
俺たちはああいう派手なマリンアクティビティで遊ぶよりも、こうして安心・安全なペダルボートを漕いで、のどかな時間を過ごす方が性に合っているのだ。
よほどの高波にでもさらわれるなどのアクシデントでもなければ、この穏やかな海で、ボートが転覆するなんて事はまずあり得ないのだから。
「ミオ、操縦うまいじゃん」
「えへへ、ありがと。最初はどっちに回せばいいのかなって、頭がこんがらがってたけど、だんだん慣れてきたの」
「じゃあ、今度はあの網で仕切られてるとこの近くまで行って、少しのんびりしよっか」
「うん。のんびりするー」
ミオにはそのままハンドルを握らせ、ボートの進路をできるだけまっすぐに調整しながら、沖合いの、少し深くなっているところを目指す。
このペダルボートは基本ゆるやかに進むのだが、万が一、他の利用客のボートと接近しすぎた場合は、ペダルを逆回転させれば、ブレーキをかけ、バックをする事も可能なのだそうだ。
まぁ、今は他の利用客もそんなに多くないので、ボート同士が接触なんて心配はいらないのだけど、一応覚えておいた方がいいテクニックではある。
ミオとの共同作業でひたすらボートを漕ぎ、俺たちは、仕切りがなされているブイの近くまでやって来た。
ここからなら、さっきのフライボードの様子や、猛スピードの水上バイクに牽引されているロデオボートを楽しむ客の姿がよく見える。
ロデオボートは、いつ振り落とされるか分からないという点で、かなりスリルのあるアクティビティだとは思うのだが、自分がやってみたいかというと、答えはノーである。
そもそも俺は、ああいうスピード感のある乗り物は怖くて乗れないんだよな。
だから、昨夜のミオとの作戦会議でも、もしロデオボートに乗ろうと言われたらどうしようかと、内心ヒヤヒヤしていたのだ。
「波のゆらゆらが気持ちいいねー」
「そうだね。見晴らしも申し分ないし、このままずっと揺られていたい気分だな」
「うんうん。雨が止んでくれてほんとによかったぁ」
昨日の夜は割と本降りだっただけに、いかに今日の降水確率が三十パーセントという低い予想でも、やはり心配だったのだ。
せっかく楽しい思い出を作りにここへ来ているのに、雨に降られて、客室でおとなしく過ごす羽目になるなんてのは、あまりにも悲しすぎるからなぁ。
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