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27.再会、そして(8)
「じゃあ、晩ご飯を食べ終わったら、腹ごなしにカラオケしに行ってみる?」
「うん。行ってみたーい」
「よーし、決まりだね。温泉から上がったら、少し早めに晩ご飯食べちゃおう」
「はーい。カツオいっぱい食べるー」
そういや、グラスボートでカツオの大群を見て、カツオ料理が食べたいって言ってたんだったな。
ミオの話を聞いているうちに、何だか俺もつられてしまって、カツオが食べたくなってきたよ。
今日のディナーバイキングは洋食にするって示し合わせてたけど、カツオだけは特別枠として、プレートにお迎えするとしますか。
「ミオ、そろそろ上がろっか?」
「そだね。体がぽかぽかしてきた……から……」
ふいに返事が途切れたので、何事かと思ってミオの顔を覗き込んだら、ミオは口を半開きにしたまま、露天風呂と大浴場を繋ぐドアの方を見つめていた。
何だろ、いかがわしい客でも入ってきたのかな?
ミオの視線を追ってみると、一人の男の子が、沸き立つ湯気の中を歩き、湯船に浸かってきた。
……おや? このセミロング気味の鮮やかなブロンドヘアーの美少女、もとい男の子には見覚えがあるぞ。
ひょっとして、ミオと砂浜で砂遊びをしていた時に、ビーチボールを取りに来た子じゃないか?
「あっ、柚月 さん!」
その男の子は俺たちの存在に気づくと、嬉しそうな様子でこちらへやって来た。
間違いない、この子はあの時に出会ったもう一人のショタっ娘、如月 レニィ君だ。
「こんばんは!」
「やぁ。レニィ君も温泉に来てたんだね」
「はい。両親は部屋にあるお風呂で充分だって言うから、僕と弟だけで来ちゃいました」
「そうなんだ。まぁせっかくの天然温泉だし、じっくりと浸かりたいよね」
「……僕、また柚月さんに会いたいって思ってたから、来てよかったです」
「はは、そっかぁ」
そう言ってもらえるのは光栄だけど、その「会いたい」ってのは、一体どういう意味なんだろう。
もしかして、レニィ君も俺にホの字なのか?
そうだとしたら、今はとんだモテ期なんだな俺は。
ただでさえ、かわいいミオにお嫁さんになりたいって慕われてるのに、ここでまた、俺の事が気になって会いたがっている子が現れたのだから。
俺は女の子にはからっきしだけど、限りなく女の子に近いショタっ娘にはモテるタイプなのかな。
「あの、柚月さん?」
「え。な、何かな」
「そちらの方は……?」
レニィ君が、小首を傾げてミオの事を尋ねてきた。
「この子はミオ。うちの子だよ」
「えっ! 柚月さん、お子さんがいらしたんですか?」
「うん。実はそうなんだ」
ミオをうちの子だと紹介した事で、レニィ君は相当なショックを受けているようだ。
ひょっとしなくても、俺が既婚者だと勘違いしちゃったかな。
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