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28.夜遊びの約束(1)

「さ。せっかくここへ来た事だし、何か飲んでいこうよ。お風呂上がりでのどが渇いただろ?」 「そうですね。じゃあ僕は、アイスミルクティーにします」 「ぼくはクリームソーダで!」  双子だから同じものを注文するのかな、と思ったけど、さすがに好みは違うか。 「了解。じゃあ呼び出しボタン押すね」 「あのー、柚月さん」 「ん?」 「ここのお会計は、僕たちに支払わせてくれませんか?」 「え? いいよ、そんな事しなくても。ここに誘ったのは俺たちなんだからさ」 「でもぉ……」 「いいからいいから。全部、大人のお兄さんに任せなさい」  飲み物の(おご)りに対して、申し訳なさそうに頭を下げるレニィ君と、ニコニコしながらお礼を言うユニィ君では、性格がまるで対照的だ。  どっちがいいとか悪いとかいう話ではなく、一見似た者同士の双子でも、それぞれ個性があるものなんだなぁ、という感想を抱いた。 「ユニィ君はサウナが好きなの?」  注文した品が揃うのを待つ間、ミオが素朴な疑問をぶつける。  ほんとはそんなに待たされていないんだけど、如月兄弟がここに来るのが遅れたとしている理由は、ユニィ君がサウナに長時間いたからだという話は、ミオの耳にも届いていたのだ。 「えっと。好きっていうか、どんだけ長く入っていられるかなーってのを試してみたくて」  そう答えると、ユニィ君は面目なさそうに頭をかいた。 「んー? サウナってそんなに大変なとこなの? お兄ちゃん」  とまで言ったところで、ミオがハッとして、両手で口を覆う。  露天風呂でレニィ君に再会した時は、ミオの事を〝うちの子〟と紹介してしまったため、俺をお兄ちゃんと呼ぶと、俺たち二人の関係について混乱を起こしかねないのである。 「え? 柚月さんって未央さんのお兄ちゃんなんですか?」  今の発言、しっかり聞かれていたか。  仕方ないな、この期に及んで変な嘘をつくわけにもいかないし、ミオにもすごく気を遣わせてしまうから、有り体に真相を話そう。 「えっと。ほんとは親子なんだけど、ミオが俺の事をお兄ちゃんだと思って慕ってくれてるんだ」 「なるほど。そういう事なんですね」 「うん。だから、ミオが俺をお兄ちゃんって呼ぶのは、特に気にしないでくれると嬉しいかな」 「はい! 分かりました」  ふぅ、これでひと安心だ。  有り体に話しておいて何だが、今の説明は、ものすごく意味の分からないロジックだよな。  何しろ俺たちは名字が違うんだから。  でも、大人が子供に教えるように話す事で生じる謎の説得力なのか、レニィ君の俺に対する尊敬の念が、思考を盲目的にしているのかは判別しかねるが、何とかごまかしきれたらしい。  ユニィ君はさっきの会話そのものを聞いていなかったのか、ニコニコしながら、窓の景色を楽しんでいる。しっかり者のお兄ちゃんと違って、マイペースな子なのかな。  実は親子関係にもかかわらず、ミオとは結婚の約束までしちゃったんだけど、そこまで明かしてしまうと尚更話がややこしくなるので、さすがにそれは黙っておいた。

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