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30.さらば、リゾートホテル(3)
「レニィ君みたいなかわいい子なら、きっと素敵な人が見つかるよ」
「そんな、かわいいだなんて……」
かわいいと言われて嬉し恥ずかしなのか、レニィ君は赤く染まった頬を両手で隠すようにしながら、何度も首を振った。
うーん、この奥ゆかしいところがまたかわいい。
というか、さっき「キスして欲しい」って言ってたけど、それって女の子の立場としての発言だよな?
やっぱりこの子もミオと一緒で、男性が好きなのだろうか。
まぁ、今日一日の、俺に対する振る舞いを見ていると、そんな推測をするのも今さらではあるよな。
別に同性に恋心を抱いたっていいんだ、それは何らおかしい事ではない。
世間の風当たりはともかく、恋愛ってのは本来自由なものだと俺は思っているから。
「レニィってばいつもこんな感じだから、学校でも女扱いされてるんですよぉ」
二人の会話を聞いていた弟のユニィ君が、お兄ちゃんの秘密をまた一つ明らかにしていく。
「あ。そうなんだ?」
「は、はい。お恥ずかしいんですけど」
「じゃあ、うちのミオと一緒だね」
「え? 未央さんもなんですか?」
「そだよー。クラスメートの女の子たちは、ボクの事、男の子だと思ってないみたいなの」
「そうなんですね! でも、分かる気がします。未央さん、すごくかわいいし、髪の毛も綺麗だから」
「そんなに綺麗かなぁ」
ミオは常日頃から俺に「かわいい」と言われ慣れているから、今さら照れたりはしないのだが、髪の毛について褒められたのは意外だったようだ。
もっとも、そういう反応になるのも分からない話ではないよな。
小学生の男の子が、同じ男の子の髪質に気がついて褒めたりするって、めったにある事じゃないから。
これはつまり、ショタっ娘であるレニィ君が、女性的な目線で、やはりショタっ娘のミオの事を見ているからこそ出てくる、言わば〝ガールズトーク〟なのだろう。
かたや爽やかなブルーのショートヘアで、かたや鮮やかなブロンドのセミロングヘア。
二人にどっちの髪が好きかと問われると、俺はきっと答えに窮すると思う。
そのくらい、二人とも魅力的だから。
「さて。あんまり遅くなっちゃ親御さんも心配するだろうから、そろそろ部屋に戻ろうか」
「はい! 今日は誘ってくださって、ほんとにありがとうございます。とても素敵な思い出になりました」
「ぼくも。みんなと歌えてすごく楽しかったです!」
「そう言ってもらえると俺たちも嬉しいよ。な、ミオ?」
「うん。お兄ちゃんのプリティクッキーも聴けたし、来てよかったよね!」
「あ、あはは。まぁミオもこう言ってるし、みんな満遍 なく楽しめたって事かな」
「そうですね。初めてのカラオケだったから、とても貴重な経験にもなったと思います」
この子たちを連れてきた時は、果たしてどんなアクシデントが起こるのかと、少し心配な部分はあった。
けど、みんな慎ましく順番を守り、時には譲り合い、歌う時は元気いっぱい声を出して楽しんでいたので、初めてのカラオケにしては大成功の結果に終わったんじゃないかと思う。
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