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30.さらば、リゾートホテル(4)
「それじゃ帰るか。レニィ君たちの部屋は何階なの? そこまで送るよ」
「あの、四階なんですけど……そこまでしていただいたら申し訳ないです!」
「えー? いいじゃん。ボクたちのすぐ下の階だから、そんなに大変じゃないよ」
そう、俺たちの泊まっている客室は真上の五階にあるし、三つもあるエレベーターのどれかに乗れれば移動もすぐなので、全く面倒ではない。
「レニィ、せっかくだから送ってもらおうよ。それなら、部屋に帰るまでにもっとお話できるでしょ?」
弟のユニィ君にも説得され、少し考えた後、レニィ君は顔を上げて答えた。
「うん、そうだね。それじゃ、お言葉に甘えます。柚月さん、未央さん、僕たちを送ってください!」
「了解。最後までエスコートするよ」
元来、この〝エスコート〟という言葉は、もっぱら男性が女性を送り届ける時に使うんだけど、まぁ相手がショタっ娘のレニィ君たちなら、まんざら間違った使い方でもないだろう。
俺たちはサービスで提供してもらった麦茶のグラスを返却し、エレベーターへと向かった。
このホテルの三つあるエレベーターは、いずれかの呼び出しボタンを押すと、三つのうち、最も近く、現在稼働していないエレベーターが到着するシステムになっている。
便利で親切な機能だよなぁ、しかも昇降速度も早いから、地階から最上階まであっという間らしいし。
「レニィ君たちのお父さんたちは、今もお仕事してるの?」
ミオがエレベーター待ちの間、如月兄弟の両親について尋ねる。
それは俺も気になってたんだよな。
いかにご両親が考古学者で、ホテルに仕事を持ち込むほどお忙しいご身分だとは言っても、さすがにこの時間まで根を詰めて働いているとは考えにくい。
「えっと。たぶん今頃は、パパもママも、お部屋でゆっくり休んでいると思います」
「そうなんだ。じゃ、お仕事は終わったのかな」
「それが、ぼくたちがカラオケに連れて行ってもらう事が決まってから、パパがちょっとしょんぼりしちゃってね」
「え。しょんぼり?」
「そう。ママが言うには、パパは忙しさにかまけて、ぼくたちの事をほったらかしにし過ぎたから反省してるらしいよ。だから、もうホテルでお仕事はしないと決めたんだって」
「ふーん。でも、こんな時間だから、今日はもうどこにも遊びに連れて行ってもらえないよねー」
若干トゲのある言い方のように聞こえるかも知れないが、ミオの言っている事は何ら間違ってはいない。
只今の時刻は夜の十時四十五分、ちょい過ぎ。
今から家族の時間を取り戻そうにも、こんな遅くではホテル内外の施設はことごとく閉まっているし、それ以前にまず、そろそろこの子たちがおねむになる頃でもあるだろうから。
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