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30.さらば、リゾートホテル(10)

 残る任務はもちろん、うちのショタっ娘ミオを無事に、自分たちの泊まる客室へ連れ帰る事だ。  今日はもう寄り道する予定もないので、客室のある五階に止まったエレベーターから出た俺たちは、真っ直ぐに客室のある方へ歩き出す。 「お兄ちゃん、ボク、眠くなってきちゃったー」  俺の腕を抱っこしながら歩いていたミオに突如として睡魔が襲ってきたのか、にわかに目をこすり出した。 「今日はたくさん遊んだもんな。もうすぐ着くから、あとちょっとだけ頑張れる?」 「うん。今日はウサちゃんとも一緒に寝るのー」  ミオが家から持ってきたウサギのぬいぐるみは、今日はほとんどお留守番だった。  だから、そんなさみしい思いをさせてしまったウサちゃんへの埋め合わせとして、今日はみんな同じベッドで寝ようという事なのだろう。  現在時刻は午後十一時ちょい過ぎ。  海水浴や各種マリンアクティビティなどで一日中遊び回ったミオは、すっかりの様子だ。  鍵を開け客室に入ると、ミオは真っ先にウサちゃんのぬいぐるみを抱っこして、そのままソファーに飛び込み、横になってしまった。 「ウサちゃん、ただいま! なでなでー」  ミオはぬいぐるみを胸に抱き、まるで本物のペットをかわいがるように優しく撫でる。  心なしか、ウサちゃんが喜んでいるように見えたのは、俺の気のせいかな。 「ふぁぁ。ウサちゃん、今日は同じベッドで寝ようね……」  と言いつつ、ミオの(まぶた)が徐々に下りてきたので、このままではソファーの上で眠りにつきそうな予感がする。  さすがにそれは体が痛くなるおそれがあって非常にまずいから、俺はミオたちを〝お姫様抱っこ〟して、二人とウサちゃんが眠るためのベッドにそっと下ろした。 「お兄ちゃん、ありがと」 「もう寝ちゃってもいいよ、ミオ。疲れたろ?」 「うん。でも、今日の日記を書いて、歯磨きもしなきゃだから。もうちょっとだけ頑張るね」  ミオはそう言うとゆっくり体を起こし、目をこすりつつ、日記の置かれているテーブルへと向かう。  そして椅子に腰掛け、ペンを取り、開いた日記帳に今日の出来事をつけ始めた。  今日はたくさん遊んだから書く事も多いんだろうなーと思っていたが、ミオはわずか十分程度で日記を書き上げてしまったようだ。  子供の体力で一日中遊び通してさぞや眠かっただろうに、それでもひとたび課題に取り組みだすと、持ち前の集中力を発揮したのはさすがの一言に尽きる。  ミオは書き終えた日記帳をリュックサックにしまうと、今度は俺と一緒に洗面所へ行き、目をショボショボさせながら歯磨きとフロスをして、眠る準備を万全に整えた。

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