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30.さらば、リゾートホテル(11)

「お兄ちゃん。全部終わったから、ボク、ベッドに行くね」 「うん、お疲れ様。俺は後片付けをやっちゃうから、先にお休み」 「お片付けするの?」 「ちょっとだけね。すぐ終わらせてそっちに行くよ」 「分かったー。それじゃ先に寝ちゃうね。お休みなさーい」 「お休み、ミオ」 「お兄ちゃん、絶対来てねっ」  ベッドで横になったミオは、ウサちゃんのぬいぐるみを抱いたまま、タオルケットをかぶって眠りについた。 「絶対来てね」、か。  俺たちが同じベッドで寝るのは当たり前の事になったけど、旅先の、こういうムードのある部屋で、俺のベッドインを待っているショタっ娘が一人。  しかもその子は、俺と結婚の約束をして、恋人として付き合う仲にまで発展しつつある。  昨日の縁結び神社と、今日の如月兄弟との出会いを経て、そこまで愛が深まったのだ。  改めて、そんなミオとこれからも一緒に寝るのだと思うと、いろんな妄想が頭をもたげてくるからか、不可抗力ながらも胸の鼓動が高鳴ってしまうのである。  いや、いかんいかん。一人でドキドキしている場合ではない。  明日になってバタバタしないように、少しでも荷物をまとめておいて、スムーズにチェックアウトできる態勢を整えなくてはならないのだ。  今日買ってきたおみやげをキャリーバッグの奥にしまい、着替え用で持ってきた衣服や下着などは綺麗に畳み、袋に詰めておく。  明日すぐ使わないものは、どんどんバッグに収納しちゃおう。  こうして片付け作業をしているうちに、これで二人の旅行も終わるんだなぁって実感がじわじわと湧いてきて、ちょっとだけさみしいという感情を抱いてしまった。  眺めのいい部屋でのんびり過ごして、おいしいご飯をたくさん食べて、プライベートビーチや釣り公園でたくさん遊んだのはとてもいい思い出だ。  ミオのはしゃぐ姿や、海が見える光景、そして二人で訪れた観光名所の数々もフィルムに収められた。  後日現像した写真は、きっと俺たちだけの、色()せない宝物になる事だろう。  ……そうだ、ついでだから、もこっそり撮っちゃおうか。  俺はテーブルに置いあったスマートフォンを手に取り、足音を殺してベッドへと近づき、すうすうと寝息を立てるミオの、天使のような寝顔にフォーカスをロックさせ、パチリとシャッターを切った。  うーん、やっぱりミオはかわいいなぁ。  ウサちゃんのぬいぐるみを抱っこしたまま寝ているミオの、その愛らしい姿を見ていると、親心から胸がときめいてしまうのは俺だけではないはずだ。  さて、やる事は大方終わらせちゃったから、俺も寝るとするか。  明日もどうか、晴れてくれますように。

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